抱っこしてトントンしてほしい

@J0hnLee

第1話 犬なのに猫可愛がり小型犬

僕の名前はシルベスター、ロッキーの主演の役者さんにちなんでご主人はつけたそうです。

5歳のシェパード犬です。

番犬として大きな檻で飼われていますが、そんなに番犬としての役目を果たしていません。

僕の体格の良さに我が家を訪れる人の大半は近づき難さを感じているようで、あまり近くに寄ってきません。

見た目ほど怖くないんだけどなあ…と少し、寂しさを感じます。

週一回来る訪問診療の内科のお医者さんは犬が好きらしく、いかつい僕に恐怖心を持たずに近寄って来てくれます。

おじいちゃんの診療が終わってから檻の柵越しに僕の体をなぜて、満足した表情で車に乗り込み帰っていきます。

なんて気持ちのいいなぜ方なんだろうと僕はうっとりします。

早く一週間立たないかなあ~。

我が家ではもう一匹犬を飼っています。

五歳の小型犬、チワワのマロンです。

お家の中で飼ってもらっています。

僕も夏の暑い日などは、クーラーの効いた部屋で涼しく過ごしたいなあと思う事がよく

あります。

マロンはお家の人に本当に可愛がられています。

犬なのに猫可愛がりです。

「マロンちゃんご飯ですよ?」とお母さんは甘ったるい声で呼びます。

僕の時は「コラ、シルベスター、残したら許さないわよ」とキツい顔をするのに。

なんて世の中は不公平なんだろうと思います。

おうちには2歳の愛ちゃんと1歳の佳奈ちゃんがいます。

お母さんは妹の佳奈ちゃんに手がかかるので、ついつい愛ちゃんのことは後回しになりがち

です。

姉妹なのにこの差は何?って僕は思ってしまいます。

マロンと同じように僕も可愛がってよ、と姉妹を見るといつも思います。

今年も夏がやって来ました。

僕は体は大きいけれど暑さには弱いです。

食欲もあまりわいてきません。

昨日の36℃の真夏日で、とうとう体を壊してしまいました。

さすがにいつもマロンばかり可愛がるお母さんもお父さんに、相談しています。

「ねえ、あなた、シルベスターがグッタリして食べたものを全部、戻しちゃうんだけどしばらく、玄関の土間で飼ってもいいかしら?」

と聞いています。

お父さんは優しい人で

「この暑さじゃ大変だよシルベスターも…入れて上げなよ」

とありがたい言葉を言ってくれました。

「なんだ、この涼しさは!外の檻の中とは全然快適さがちがうじゃん」

と僕は感謝感激です。

そんな玄関の土間からリビングを見ると、マロンが楽しそうに走り回っています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る