第22話
今回も約一名がそういった目で見てくるのを感じていた。
ただ、何となくだがいつもの奴らとは雰囲気が異なるような気もする。
「姉さん、そろそろ中に入るみたいだ。少し注意した方がいい。」
「うん。」
考えごとをしている場合ではなかった。
アドルはいつも冷静だ。
私があれこれと考えを巡らせている間も周囲を警戒してくれている。
これまでの旅で何度危機的状況から救ってくれたかわからないくらいだ。たぶん、私がアドルを助けた三倍くらいはそうしてくれたはず。
三人組の冒険者が先行して洞窟へと入って行った。
すぐに後を追いながら、いつでも臨戦態勢を取れるように身構える。
敵は洞窟内にいる魔物だけじゃないかもしれない。前を進む冒険者たちがいつ牙を剥くかわからない。
ミューフは不審な動きを見落とさないように集中した。
「どういうこと?」
洞窟を進み、しばらくしてから冒険者が姿をくらませた。
今いる場所は少し広い空間で、その先は二箇所に枝分かれするように通路が進んでいる。先行していたのだから姿が見えなくなるくらいのことはありえるだろう。
しかし、それほど距離を取っていたわけでもなく、気配すら消えるというのは考えられなかった。
「やっぱり、今回も悪意ある行動に出られたのかもね。」
アレンが剣を抜きながらそう言った。
「でも様子がおかしいわ。どこかに潜んでいる感じはしないし、こんなところに置いてきぼりにされる意味がわからない。」
自分たちを襲うとしたら、完全に姿を消すというのは解せない。それとも、姿や気配を消せるような魔道具でもあるのだろうか。
そんな物があるとして、それはかなり高価な物だと思える。それを使い、さらに冒険者のルールを破るようなリスクを負うほどの価値が自分たちにあるとは考えられなかった。
「···何か来る。」
アレンがこちらに押し寄せてくる気配を読んだ。
ミューフにも同じような気配が伝わってきていた。
「小さな魔物···数が多い。」
「ああ、たぶんゴブリンだ。」
ゴブリンは子どもくらいの大きさでそれほど強くはない。ただ、数頼みで来られると対処が難しくなる。
「一度戻るわよ。」
ミューフはそう言って、来た道を戻ろうとした。
「あっ!?」
今更ながらに気づいた。
この場所に入ってきたときに使った通路に結界が張られている。魔法が使えない自分たちだが、魔力がまったくないわけではないため結界の存在くらいは知ることができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます