第12話
過去を振り返るのはほどほどにして、カレンとの会話を思い返す。
「ここは前の街よりも大きな組織が犯罪に手を染めているわ。動きやすいのはわかるけれど、ソロで動くのは危険よ。」
「専従契約すると活動の中身が知れ渡らないか?」
「少し難しいけれど、個人的に契約を結べばその問題はないわ。」
「個人的にか···」
通常、専従者はどこかに属しているものだ。
専従契約を結びたい者はそこを訪れて任意の期間契約を行う。その際にはどのような活動をするのかも説明しなければならない。危険度によって貸し出せる専従者の値段も変わるからである。
一方、個人的に契約を結ぶ場合は、その意思がある者を探し出して契約のみを専門の業者に行わせるため活動内容が漏れる心配はない。
ただし、そのような希望を持つフリーの専従者などなかなかいないのである。
パーティー要員を探す方が遥かに簡単だといえた。
さしあたっては、冒険者ギルドでそのような希望を持つ者を探してみるしかない。
カレンに聞いてみたが、専従者の斡旋などはそれを生業としている者への越権行為となり関与できないそうだ。
そうなると個人的に探すしかない訳だが、手当り次第に聞くわけにもいかず難航する予感がしていた。
翌朝、冒険者ギルドのホールで壁によりかかって行き交う者を観察する。
もちろん、揉め事に発展しないようにさり気なくだ。
血気盛んな者も多いため、目が合ったらケンカに発展する可能性も低くはなかった。
ただ、昨日の今日ということもあり、受付カウンター内からちらちらと視線を寄越されている。
ライラも先輩受付嬢についてもらって業務を行っていた。目が合う度にニコッと笑ってくるので無視する訳にもいかず、微笑み返していると近場からも視線を集めてしまう。
ここは新顔らしく腰を引くく、愛想を振りまいて場所を移動した方が良さそうだ。
ギルドホールの奥に食事処兼酒場が併設されているのでそちらへと向かうことにした。
「あの人、ナオさんよね?」
「あ、はい。ご存知なんですか?」
「ええ、昨日に拠点異動の手続きをさせてもらったから。そういえば、ライラは同じギルドに所属していたのよね?」
「そうみたいです。でも、私は冒険者の方が出払った時にしかカウンターには出なかったので、お会いするのは昨日が初めてでした。」
ナオの姿をふたりして視線で追う。
「そう。あの人って、冒険者にしては無防備に見えるわよね?ランクと見合ってないというか···すぐに絡まれそうに見えない?」
確かにナオは優男というか貫禄を感じさせなかった。
Aランクの冒険者だと聞いて驚いているくらいだ。
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