永遠の誓い(仮)

颯風 こゆき

第1話 プロローグ

「こんにちは。育成ゲーム『永遠の誓い』へようこそ」

携帯の中で光を放ちながら、案内役の小さな妖精が微笑みながら語りかける。

「それでは、このゲームの説明をしましょう」

そう言うと、画面が次々と切り替わり、妖精がパタパタと羽を動かせながら案内して行く。


「まずは、あなたの事をお聞かせ下さい」

プレイヤーのプロフィール欄へ飛ぶと、名前などを入力する画面に切り替わる。

「名前、年齢、誕生日などを入力しましたら、今度は育てるキャラを選びます。

あなたがこのAIキャラに望んでいる事・・・それが形成されます。

ペットを育てたいのであれば動物一覧から、人間を育てたい場合は、姿形まで形成が可能です。ただ、重要なのは、あなたが望んでいる事です。

キャラがあなたにとってどんな存在なのか・・・友人なのか、家族なのか、恋人なのか・・・人間を選んだ場合、アイドルなどの役職も選ぶ事が可能です。

あなたが本当に望んでいる存在を選ぶ事で、心に癒しを与える事ができます。

言葉での入力や選択での会話もできますが、直接話しかける事で作り上げたAIキャラがあなたの事をよく知る事ができ、ゲームと連携している体温や心拍数を感知する機能が、あなたの心情を悟り、より一層心から寄り添える相手となります。

動物の場合は、あくまでもその動物の特性を活かしたままの癒しとなるので、人間と同じような会話は望めませんが、信頼を築く事で本物の動物と同じように寄り添ってくれる様になります。

どのキャラも赤ん坊から育てますが、人間の場合、設定が年上、年下まで細かく設定ができ、その年齢に達するまでは一気に物語が進みますので、くれぐれも放置などはなさらないで下さい。長期間放置されますと、自動的にリセットされます。

また、このゲームは基本無料になっていますが、アイテムなどが一部有料になっていますので、課金等には十分ご注意してください。

最後に、いつでも寄り添えるように、普段は携帯からでの通信となりますが、別付属品のVRを使って楽しむ事も可能です。

それでは、あなたが望む物を手に入れましょう。あなたへ『永遠の誓い』をしてくれる相手と出会えます様に・・・・」

優雅にお辞儀をすると、妖精は微笑みながらキラキラとした光を放ち、消えた。



「ユ、ウ・・?」

「わぁ、やっと喋れる様になった!!3日間頑張って育てて良かった〜」

暗いベットの上で、満面の笑みを浮かべ、携帯を握りしめる。

「こまめにお世話して3日で生後一年・・・僕と同じ年になるには・・・うん、頑張れば一ヶ月もかからないかも・・・」

指折り数えながら小さく微笑むと、画面の中で微笑む赤ちゃんをそっと撫でる。

「本当にリアルだなぁ・・・レン、大事に大事に可愛がって育てるから、早く大きくなってね。僕、君と友達になりたいんだ。ずっとずっと僕の側にいてくれる唯一の友達に・・・」

そう言いながら、寂しそうに微笑む。それからそっと画面にキスをして、また指で頭を撫でる。

「今日はもう寝なきゃ・・・おやすみ。蓮・・・」

最後にと、また画面にキスをすると画面の中の幼児が小さく欠伸を漏らす。

その姿を微笑ましく見つめながら、寝かしつけるかのように画面を優しくタップする。

親が子を寝かしつけるように、トントンと小さな音を立てて叩くと、いつの間にか赤ちゃんは寝入ってしまう。

それを見届けた後、画面を暗くして枕元にそっと置くと、体の向きを変えて天井を仰ぐ。


こんなに明日が楽しみなのは初めてかもしれない・・・そう思いながら小さく微笑むと、そっと目を閉じる。

早く・・・早く朝になれ・・・・。

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