6.まな板の鯉

 深々と頭を下げる小田、それに倣っておずおずと那須も頭を下げた。


「頼む、俺を連れていってくれ」


「私からもお願いします」


 高橋は、頷き了承した。


「骨は拾わんからな。さて、君たちはどうする?」


 高橋の視線は、立花と誾傘へ向いた。


「そこまで言われたら、行かないわけないじゃない」


「アタシは姉御に付いていく」


「満場一致だな、なら準備に取り掛かれ。明日の早朝六時の赤雛学園校庭へ集まるように」


 それぞれ分かれ、準備に取り掛かる。


 赤雛学園に入学したばかりだというのに、すでに戦乱の渦中にある。


「小田様、これからどちらへ」


「いつものとこ」


「ストリートですね。了解です」


 裏路地に入り、不良のたまり場を見つけた。


「俺らの縄張りになんか用か?」


「ウヒョー、可愛い娘連れてるじゃん」


「雑魚には用はねえ」


「なんだとぉ」


 カチンときた不良A、Bはバットを振りかざす。


 那須は、銃を不良に向けて撃った。不良は吹き飛び、のたうち回っている。


 この銃は、空気銃という。弾丸の代わりに空気を飛ばす。実物の銃と比べれば威力は落ちるが、そのダメージは百五十キロの力士を吹き飛ばすほどのパワーを秘めている。


「ハズレだな」


「別の場所に行きましょう」


 何件か不良の縄張りに入り、同じことを繰り返した。


「雑魚ばっかりだな」


 諦めかけた頃、通り道にお嬢様学校が見えた。流石にこんなところに不良はいないだろう。


 喫茶店でもないだろうか?少し疲れた。細道に入り、大通りを目指す。


「貴殿方」


 急に呼び止められ、振り返ると。お嬢様然とした女生徒が二人。


「貴殿方は、不良というものですよね?双葉女学園の風紀委員として、粛正致します」


「粛正ね、なんかよくわからんが。喧嘩したいなら相手してやるよ」


「正々堂々行きますよ!」


 その瞬間、女が消え。俺が壁に激突した。一瞬見えたあの動き、摺り足だ。


 隣にいた女学生も、只者ではない。那須の空気弾を完全に見切っている。


「やっと見つけた」


「ハッ?何が!!」


「お前ら、俺の仲間になれ」


「嫌よ」


「お断りだ」


「じゃあ、負けた方は勝った方に一つ命令できる。それでどうだ」


「わかりました。私たちが勝てば貴殿方は、もう双葉女学園の半径一キロ内に近づかないでもらえます?」


「OK」


「小笠さん、すいません。勝手に決めてしまい」


「大内委員長、大丈夫ですよ。あんな不良、さっさと片付けて、仕事に戻りましょう」


「はい」


「那須、やるぞ」


「全力で」


 小田は、ふと思った。まさかお嬢様と喧嘩することになるとは、世の中わかんねーな。

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