燃す

りろい/Liloy

第1話 幼い

子供の頃は、褒められた。

親も先生も可愛がってくれた。

僕は俗に言う「いい子」だった。

大人の言うことを聞き、愛想笑顔が得意。

相手が答えて欲しいであろう回答を用意する。

「いい子」というのは、そういうことだ。

子供らしくないだの可愛げがないだの、でも大人に近い子供。それを「いい子」と呼ぶ。

そんな僕は自分の意見が言えずにイエスマンになっていき、周りに流されていった。

でも少し知恵を使えばそんな困難、

いや困難とも呼べない障害を乗り越えられた。

クラスメイトからは嫌われた。でも、大人からは信頼を買っていた。それで良かった。

将来有望なのは誰がどう見ても僕だっただろう。周りは子供だから分からないよね。

僕がそれを本音で喋っていないということを。

全て計算されて動かされていることを。

どこまで行っても僕は「いい子」で居続けたんだ。そんな生活をしているうちに自分という存在を見失った。当然だ。幼い時から自制し、

自我を殺して「いい子」を演じていたから。

役に入ると自分が分からなくなる俳優のように、それを常日頃行っていた僕は、本当の僕を知らなかった。でも小学生なんかそれで生きていけた。親も先生も味方でいてくれたし、

流されてれば生きていける社会だから。

それを苦に思わず生活していた。

しかし、とある日を境に

自我が欲しくなってくるものだ。人間は。

僕はそれが早かった。

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