第2話

『えーっと、お邪魔しま〜す』


……殺し損ねた?いやまさか、あれから何年経ったと思っている


それ以前に奴は蟲ではない、ふむ……殺すか?

この世界は滅びる、そしてそれまでこの世界の墓守と栄光樹の守護が私の役目だ


もし蟲達を侮辱するのなら蟲達を辱めるのなら

この栄光樹を奪おうというのなら……殺さねばな


「……貴様、何者だ」

『あっ、俺はその……色々あって異世界から来た者でしてぇ……』


ふむ、異世界なるほど

この世界がどうなる訳ではなく他の世界からこの世界に一時的に滞在する、というだけか


しかし、目的によっては……殺さねばならんな


『えっとその……貴方の説得ですかね』


説得?異世界の存在が?私を?

……なぜ?


「説得?私の何を説得するというのだ」

『えーっと……俺に付いてきて欲しい、とか?』


「それは、無理だな。私はこの世界が滅びるその時まで王として君臨すると、友に…民に誓ったのだ」

『えーっと、じゃあどうやったら付いてきてくれますかね?』


ふむ、飽くまで諦めないか

だが、もし、もしも私が誓いを反故にするとしたならばそれは……


「ふむ……私が友に…民達に謝れるなら、付いていこう、だがそれ以外でお前に付いていく事はない」


もう一度彼らに会いたい、そして謝りたい

これが叶うのならば私はプライドなぞ放り投げよう


あの日、私が殺した彼らともう一度会えるのなら誓い如き、プライド如き……


ーーー


あの日は、滅びが始まって暫くの事だった

我々は分かっていた


この世界が滅ぶ、そして滅ぶより前に、我々の食料である木々は枯れる……栄光樹を除いて


栄光樹の樹液を得られるのは王たる蟲一匹……いやそれ以前に樹液の量からして蟲一匹が食いつなぐのでやっとの量だ


故に、我々は一匹を除いて死に絶える

そんな予想が立っていた


我々蟲は、戦いを……決闘を尊ぶ種族だ

故に、例外的に王たる私とそれ以外の蟲全員での

……10万2436匹組手が始まった


本来殺しは良しとされないがその日だけは違った

飢えて死なぬ為に、決闘の栄光の中で死ぬ為に我々は殺し合った


今でも昨日のように思い出せる、一匹一匹が全力を賭して私に向かってきた


覚醒、鍛え抜いた蟲の辿り着く一つの極致

全ての蟲がその覚醒に辿り着いた


死ぬ事を前提に、少しでも私に覚えられて死ぬ為に皆が命を削り覚醒に至った


そして、幾人かの強者と四天王、元から覚醒に至って居た数少ない蟲達は、二次覚醒……


覚醒を越えたナニカに辿り着いた

それに対抗する為に、私も二次覚醒に至り


そして……最後に、最強の四天王であった友と本気で殺し合い、私が勝った


不毛な勝負だった、勝ったほうが永劫の墓守となるああ、だからこそ戦った、互いを孤独にしない為にそして私は勝ち、孤独になった


ああ……もう一度、もう一度だけ皆と会いたい

そして、謝って、それで……決闘について話して

最後にもう一度だけ、決闘を……


ーーー


『……もしかしたら、会わせられるかもしれません貴方を民達に』

「それは……本当だろうな?」





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