第三章 六
車内を離れて、烏堂は外を佐竹と歩いていた。
近くには、交通量の激しい国道が通っている。ここにいても、車の走行音が微かに聞こえていた。
烏堂が、ふいに口を開いた。
「少し聞きたいことがあるんだが」
「何ですか」
佐竹が、さっと烏堂に視線を向ける。
烏堂は言いにくそうに、だが言葉を選びつつも言った。
「女性は、その——変質者に会ったときに、どういう行動を取るんだ。ええと、佐竹の場合は」
「わたしの場合ですか? ——とりあえず、逃げ道を探しますね。一瞬でも早く逃げて、助けを求めたいですから」
「だよなぁ」
烏堂が腕を組んだ。同時に、天を仰ぐように顔を上に向けた。
「何です? 違う行動を取った方が良いと言うことですか」
烏堂の言い様に、佐竹が少しだけ目を細めた。
「いや、おそらく、それで良いはずなんだが、緊急の連絡手段を考えたりはしないか」
「たとえば、緊急ブザーのひもを引っ張ったり? そんなことをすれば、相手の強い恨みをかって、何をされるかわかりませんし」
口元に指を当て、佐竹が微かに首を傾げた。
「そうではなくて、裏でこっそりとボタンを押して連絡するような——」
「緊急の短縮ダイヤルですか? それでしたら、登録している人もいるかもしれませんね」
佐竹の言葉に、烏堂が、はっとした表情をした。それだ、と言うように指を向ける。
対するように、佐竹の表情はぎこちなく、わけがわからないと言ったものだった。
「短縮ダイヤルの登録? そうか、それが——」
急いで携帯を取り出すと、烏堂は、ある人物に電話をかけ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます