第15話 バロンの学園生活

 温かな日差しが心地よい午後。新領主バンドーム公爵の就任式が終わり、僕は国営フォレス学園の中庭で、一人昼食の弁当の蓋を開ける。


 現在、僕は九年生、一五歳になった日に授かったギフトは【神の恩寵カリスマ】。このギフトは、まるで神話の英雄に与えられる祝福のように、不屈の心、恐怖心の制御、回復、身体強化、精神干渉耐性といった、様々な能力を僕にもたらした。しかも、それぞれの特性が僕の成長と共に強化されていく。まさに、神々しいまでのチート能力だ。

 

 このギフトを授かった事で、学園だけでなく街中が騒然となった。まるで伝説の勇者が現れたかのように、人々は僕に注目した。「遂にこの街から勇者が誕生する」とか、「フォレス学園首席間違いなし」とか、貴族が僕を懐柔しようと会いに来たりとか、僕の周りは一変したんだ。

 

 そうだ、貴族と言えば。この学園には貴族も通っている。彼らは、まるで生まれながらにして特権を持っているかのように、元々良いギフトを授かりやすい。優れた魔法を使えたり、強力な精神攻撃を使えたりと、その力は計り知れない。そして、その力を背景に、学園で大きな顔をして、平民の学生を虐めたり、嫌がらせをしてきたりするのだ。

 

 そんな中、【神の恩寵カリスマ】のギフトを授かった平民の僕だ。まるで、貴族たちの牙城に突如現れた、反逆者のような存在だ。貴族たちからすると、邪魔な存在でしかなかったんだろうね。


 執拗な嫌がらせは度々起こった。

 今日もそうだ。僕はいつものように校庭の片隅で、一人弁当の蓋を開ける。平民の僕にとって、貴族たちと一緒に食事をするのは、まるで針のむしろに座るようなものだからだ。

 

 ふと顔を上げると、貴族の学生たちが、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。彼らの目には、僕を見下すような、侮蔑の色が浮かんでいる。

 

 「やぁ、これはこれは、我らが【神の恩寵カリスマ】様ではないか」

 

 リーダー格の貴族が、皮肉たっぷりに言う。他の貴族たちも、それに合わせるように嘲笑を浮かべる。

 

 「平民の分際で、貴族の我々と同じ空気を吸うのは、気分が良いだろ」

 「ああ、平民とは言え、【神の恩寵カリスマ】を授かった男だからな。特別扱いしてやらないと」

 「そう。特別扱いを……ね!」


 貴族の手のひらから炎の塊が放たれ、僕が手に持つ弁当箱に当たる。炎に包まれ宙を舞う僕の昼食は十歩先で落下した。

 

 僕は、怒りに震える瞳で貴族たちを睨みつけ、ベンチに立て掛けてあった剣を手に取る。冷たい金属の感触が、僕の怒りを更に煽る。

 

「おっと。実技演習以外で、貴族相手に剣を抜くってどういうことかわかるよな?」

 

 貴族の一人が、僕を見下すような口調で言う。その言葉は、まるで僕の怒りに油を注ぐかのようだった。

 

「くっ……」

 

 しかし、僕は理性の声に耳を傾け、剣を元の位置に戻した。貴族に逆らえば、事態はさらに悪化すると分かっていたからだ。

 

「わかってるじゃないか。結構結構! じゃあな。また特別扱いしてやるよ」


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