第13話 盗賊団の新たな出発
久しぶりに砦へ戻ってきたライアスは、一時、身を隠していた仲間たちの顔を見て、ほっとした。
会議室には序列一位から一二位の俺まですべての幹部が勢揃いしている。まるで、重要な決定を下す前の、緊張感に満ちた空気が漂っている。
序列一位のクライド、少年の俺を気に入り仲間に受け入れる許可をした男だ。彼だけは俺のギフトが【
「ライアスがこの度、領主キンダー伯爵の罪を暴いた。盗賊の濡れ衣も晴れたみたいだな。フォレス領の状況の報告をしてもらう。キース、入れ」
キースが会議室に現れる。彼はフォレスの街で酒場の店主として潜入している。俺がちょくちょく情報収集を依頼している、その男だ。酒場というところは、冒険者や商人をはじめ多くの情報が集まる。キースのギフト【
「キンダー伯爵のその後の情報を報告します。マウンセアの冒険者に捕らえられたキンダー伯爵は、王都に連行されました。財務資料を押収して調査したところ、グラフト盗賊団討伐の報酬の支払いが滞っていること、ゴルデア商会からの不正入金など、数年に渡る不正が横行していたようです。」
「領主不在のフォレス領に王都から新しい領主として任命されたのは王都の中央貴族、今のところ王家とも縁のあり、政治手腕の優れたバンドーム公爵が濃厚とのことです。来月にはフォレス領に来るらしいので、暫くは腐敗した政治の整理で混乱もあると思います。以上です」
「そうか、報告ご苦労。もう下ってよい」
クライドが口を開く、しばし、考え決断を下した。
「我々グラフト盗賊団は暫く潜伏することとする。そして、名称も変えようと思う。フォレス領、マウンセア領以外にも潜伏範囲を広げる。配置は追って通達をだす。いいなお前ら」
幹部会議が終わると、砦で宴が始まる。まるで、広場の中心の大きな焚き火を中心に、皆の笑顔が弾けている。
俺の周りには、酒場に潜伏しているキース、ファルマン商会に潜伏しているガイアンがいる。
「ノル様、私が作ったローストビーフです」
「おう。ありがとう」
「最近、ノル様は街で見かけませんね」
「ああ、暫くこの砦にいたんだ、ファルマン商会のマーロック氏に嘘の長期の指名依頼を出してもらったんだ」
「偽装工作なら私達がやるのに。カタギを巻き込むのは危険じゃないですかい?」
「ありがとうガイアン。ファルマン商会とは今後もっと近づきたいと思っていてな」
「おーい!ノル! こっち来いよ」
「幹部のやつらに呼ばれた。ちょっと行ってくるよ」
「おい!ノル! 飲んでるか?」
「ああ」
「その割にゃテンションが低いな。若い奴はもっとこう、明るいもんだぞ」
序列十一位のベクトが肩を組んでくる。俺はその手を振り払い盃に口をつける。
「でもなぁ、あの時の学生のガキが今や幹部様だ。大したもんだよ」
「ベクトと俺はたいして歳変わらないだろ」
「バカヤロウ! 五歳の差はでかいぞ」
「なぁライアス、さっきの幹部会議でフォレス領、マウンセア領以外にも縄張りを広げるっていっただろ。お前はどう思う」
「ああ、クライド。俺も同意だ。俺達の所帯もでかくなってきたし、片っ端から強奪してたら破滅の道を進んでしまう。裏ルートでの商売も始めた方が良い」
「そうか。今の縄張りは俺達で拡大していく。お前は新しい他の領地の開拓をしてくれないか?そこのベクトを連れてって良い」
「うーん。領地の開拓をするのはいいが、ベクトが相棒ってのがな……」
「てめぇ! 俺の【
「やめてくれ。あれ、気持ち悪んだよ。ったく。わかったよ。」
「この盗賊団も名前を変えないとな。盗賊家業ばっかりやってられねぇし。なんかいいアイデアねぇか? ライアス、そういうの得意だろ。学園に行ってたし」
「……そうだな。幹部が十二人。……クロノス旅団ってのはどうだ?」
「時計って意味か。いいな。決まりだ。俺達は今日からクロノス旅団だ!」
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