2 カイ誕生
は?あんた誰?
そう言おうとすると、
「ゔぁああああああああああああーーーーーー」
なんかすげえけたたましい鳴き声を出した。
俺の体が。
「でかした、よくやったぞエリナ!」
さっきの男性がエリナと呼ばれる女性に話しかけている。
「ありがとうダン。これがあなたの息子よ」
そうして俺を抱いたエリナがダンの方に俺を差し出す。
え、父親?母親?意味わかんねえんだけど。
そこで気づいた。
あ、俺転生したんだ。
そんな俺の困惑そっちのけでダンは俺をあやす。
非常に口が臭い。お前絶対酒飲んだやろ。
「よし決めた!お前の名前はカイだ!」
おお!感動!俺、人が名付けられるとこ初めて見たぞ!
なんなら父さん母さんの顔見るのも初めてやんけ!
転生したことがどうでもいいぐらい興奮が抑えられない。
テンパった俺はなぜかまず挨拶をしようとする。
「
めちゃくちゃ間抜けな声。
おっとそうか。俺赤ちゃんだったな。思考力は高くても身体は赤ちゃんということか。なるほど。
ガチャリ
すると奥のドアが開いてめちゃくちゃ耳の長いきれいな女性が入ってきた。
俺は思考が停止した。
コイツ、ただもんじゃない。なにかはわからないがエグい力を感じる。
ただ、その力の流れはとても清らかだ。コイツは敵じゃないな。まあ信用はできんが。
ただそれだけじゃない。
多分俺が間違っていなければ、
コイツは
そのとき俺は産まれた世界がファンタジーマシマシのとんでもない世界だと悟った。
俺は創作物を読むのが嫌いだ。
何も努力せずに運に恵まれて幸せになる展開。 親や祖先が優れている事によって生まれ持った才能で何事も上手くいく物語。 根拠のない理由で女の子からチヤホヤされる主人公。そして約束されたハッピーエンド。
何も得られなかった俺がこんなお決まりな展開の物語を読むのは拷問に値するのだ。
だがそんな俺でもわかる。
一人暮らし時代にちょろっとやってすぐやめたゲームにも出てきた。
異常な程に長い耳とその美貌。
何よりその圧倒的な清らかな力。
俺の知り得る特徴がゲームの中から全部出てきたかのような佇まい。
コイツは間違いなくエルフだ。
そう思った瞬間、俺の脳内に電流が走る。
エルフは魔族だ。
そしてエルフは魔法を使って生きる魔族だ。
エルフがいるということは、その法則は人間にも適応されるはずだ
つまりこの世界は、魔法が使える可能性がある。
そしてこのエルフから感じるこの力こそ魔力なのでは?
ていうか仮にこれが魔力だとすると、その力を俺が感じ取れているのも異常じゃないか?
あれもしかして俺天才?
ここまで一気に考えると興奮してきた。
そして思わず声に出してしまう。
「
「あらー元気なお子さんね」
あー俺そーいやガキなんだった。
「ありがとうございますセルバ先生!」
エルフの言葉にエリナが答える。なるほど。このエルフの名前はセルバか。
てかマジでキレイだな。先生って呼ぼ。
「エリナさん、頑張りましたわね!さて!このコを魔力検知してもいいですの?」
おおーっとお?なんか始まるぞ?俺魔力検知で引っかかったら間引かれちゃう感じ?
俺なんか先生の魔力感じちゃってるけど大丈夫か?引っかかんないか?
「わかりました。この子をお願いしますよ先生!」
ダンが答える。
そして俺はセルバに連れられ、別室の魔法陣に乗せられた。
大事なことなのでもう一度言う。魔法陣に乗せられた。あの魔法陣だ。バカかっこいい。エグい。
そんなIQ5に成り下がった俺を置いて先生は実験を始める。マッドサイエンティストだ。かっこいい。エロい。
時間が経って
俺の解析が進んでいくとどんどんセルバは青い顔をする。
「こっ・・このコ・・・」
そう言うとセルバは赤ん坊の俺を部屋に残してどっかに消えていった。職務怠慢である。
患者から目ェ離すなよ。意味わかんねえよ。俺産まれたばっかだろ。殺すぞ。
・・・俺が殺すぞとか言ってると冗談になんねえな。てか眠いわ。疲れた。
そう思って俺は、新しい体の本能のまま眠りについた。
魔法陣に表示されていた文字列を気にも止めずに。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
これは解析魔法陣に浮かび上がっていた文字列です。
《解析結果》
個体名 カイ=ブラッドリー
スキル
役職
固有呪文
総合魔力 ----
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
目を開けると何故か泣いている両親(この響きエグいな)がいた。
「ごめんなさいダン、こ・・・この子が10日しか生きられないなんて・・・」
は?
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