破れ鍋に綴じ蓋

@gfdlove

第1話

妻が浮気してた。まじか。


今日はたまにある土曜日出勤だった。

仕事が珍しく昼に終わって帰宅していたら、嫁さんとチャラい感じの若い男が、腕を組んで歩いてた。


俺、あんな服見た事無いんだけどw

なんか、めちゃくちゃ気合い入ってんな〜。

とりあえず尾行するしかないよなぁ。


俺は27才、嫁は25才、俺が20歳の時から付き合ってるからもう7年かぁー

結構仲良かったと思うし、幸せだったんだけどなぁ〜


そんな事を考えながら、跡をつけて行った。

それなりにショックなんだけど、泣きながら逃げ出すとかじゃないんだよなぁ〜。


このくらいしかショックじゃないって、妻に対する愛情が足りなかったのか?

だから浮気されたのか?


気付いたら嫁さんとチャラ男がホテルに入っていった。

あーこりゃもう確定しちゃったか。とりあえず写真は撮っておこう。

あと、どうするかな。ひとまず家帰ってから考えよ・・・


*****

家に帰って、ソファに座り、とりあえず興信所を携帯で検索してみた。

やっぱり証拠を残す為に頼んだ方が良いんかなぁ〜。

でもお金掛かるし、俺はそもそも離婚したいのか?アイツと別れたいのか?


そんな事を考えていたら、いつの間にか寝ちゃってた。起きたらタオルケットを掛けられてた。あぁ、アイツ帰って来てたのか。


「あっ、起きたんだ。そんな所で寝てたら、風邪引くよー」


「おう、ごめん、ごめん。寝ちゃってたわ」


「今日は早かったんだねー。教えてくれたら良かったのに。」


「たまたま早く終わったから、ユリを驚かせてやろうって思ってwwいなかったけどさww」


「えっ、あっ、友達と買い物に行ってたんだよね。何も買わなかったけど。」


「ふーん、そっか。楽しかった?」


「うん、楽しかったよ。せっかく早く帰ってきたのにごめんね・・・もう6時だし、ご飯にしよっか。」


「あぁ、そうだな。」


「じゃあ、今から作るね!」


うん?、アイツこれから作るって事はあのチャラ男のアレをナニしてた手で作るって事?

あっ、無理だわ。


「ちょっと待っててね。」


さすがに何時間前まで他人のおちん○ん触ってた手で作る料理は、きっついな。食えん・・


「あっ、今日はたまには外に食べに行こうぜ」


「えっでもこの時間じゃ混んでるんじゃない?すぐに出来るよ?」


「まぁ、いいじゃん。たまにはさ。久しぶりに昔よく行った駅前のお店行こうよ。」


「うん、まぁ・・あなたがそんなに行きたいんなら良いけど。でも懐かしいねw」


「あぁ、そうだな。大学時代なんか金無かったからよく行ったよな〜」


それから2人で駅前の店まで思い出話しをしながら、歩いた。

お店は若い子達で混んでいたけど、それほど待たされずに席に案内してくれた。


「何にするの?」


「ハンバーグセット」


「ぷっ、あなたって、いつもそれだったよね〜w一応イタリアンなのに、いっつもそれ w」


「だって1番お腹に溜まるし、安いじゃんw食費は節約してでも、ユリと色んな所行きたかったんだよ。俺は一人暮らしだったからさ、ユリより金無かったしな。」


「そっか、色んな所連れてってくれたもんね」


「ユリは何にする?昔と違って何だって選びたい放題だぜ wなんならこのページから、このページまでとかでもw」


「もうっ、馬鹿ばっかり w私も懐かしいから、このパスタにしよっかな。」


ユリの作る料理が食べたくなくて、咄嗟の思いつきで決めた店だけど悪くなかったな。


料理が届いて、2人で食べていると嫁さんが、


「ほら、あなた、あーんw」


フォークに巻いたパスタを俺に向けてくる。

この口でチャラ男のナニを咥えてたんだろって思っちゃうんだよなぁ・・

チャラ男味のパスタなんか食いたくねぇ。

うーん、どうしよう・・・


「今日はもうお腹いっぱいだからさ、大丈夫。」


「えっ・・そう、じゃあ。」


嫁さんが少し淋しそうな顔をしながら、自分の口に戻した。

そんな顔するぐらいなら、浮気なんかすんなっつーの。

それからちょっと気まずい雰囲気になってしまい、お互い無言で食事を終えた。


店を出て、また2人で並んで歩く。家まで半分過ぎた辺りで嫁さんが突然手を握って来た。

ちょっとイヤだなと思ったけど、握るぐらいなら・・まぁいいか。

手の感触は昔と変わってないんだなぁ。

こう、まじまじと確かめた事なんて無かったもんな。


「ごめんね・・・」


嫁さんがポツリと呟いた。


「んっ、何が?」


「ん〜ん、何となく・・・」


嫁さんが小さな声で答えた。

手を繋いだまま、無言でしばらく歩いて。



「なぁ、ユリ・・なんで浮気なんかしたんだ?俺に不満があったのか?」


「えっ、あぁ・・やっぱり気付いてたんだ・・ねぇ、いつから気付いてたの?・・・」


「気付いたっていうか、ユリが今日、男と一緒に歩いてるのを見たんだ。それで2人でホテルに入ってくまで確認したよ。」


「そっかぁ〜・・、あのさ、後はお家に着いてからでもいいかな?」


嫁さんは一瞬上を向いて、俺からそっと手を離した。

それから、またお互い無言に戻って、嫁さんが俺の後ろをうつむきながらついてきた。

はぁ〜、何やってんだよ・・・

後悔するなら、やるんじゃねぇよ・・バカ・・


*******

家に帰り、向き合ってテーブルについた。


俺もまだ何にも考えてないんだよな・・。

別れる?、許す?、まぁ話しを聞いて決めるしかないか・・


席に付いてからも、ずっと下を向いたままの嫁さんがゆっくりと口を開いた。

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