第39話


 解体してもらったゴブリンとワイルドボアの耳をギルドに届け、さらに薬草の納品もおこなったら無事Dランク冒険者になれた。

 それもこれも、すべては地球の武器たちのおかげだ。特に、リアたち三人だ。

 彼女たちがいなければ今頃俺はまだまだGランク冒険者として細々とゴブリンを倒していたことだろう。

 それはそれで、その生活も悪くはないかもしれないが、今の生活の方が胸を張って楽しいと言えるだろう。


 とりあえず、次からはDランク迷宮に挑みたいので、南の村行きの馬車の護衛依頼を探していく。

 護衛依頼がお勧めされた理由は、やはり馬車に乗せてもらえるからだ。

 南の村……ストントン村はそこまで大きくないらしく、わざわざそこに向けての馬車はない。

 なので、行くとしたら徒歩か自前で馬車を用意するしかない。


 徒歩だと、色々大変らしい。野営をしなければならないし、それに関しての見張りも必要になる。

 別に野営はアイテムボックスでいくらでも凌げると思うが、夜の見張りは四人でやると少し不安だ。

 徒歩だと数日はかかるらしいし、やはり乗り物がほしい。


 今の所は護衛依頼がなかったので、受付に要望だけを伝えておいて、宿に戻る。

 要望を伝えておけば、そういった依頼が出た時にギルド側としても助かるそうだ。


 そんなこんなでしばらく魔物狩りをしつつ、休日だったので、三人に休みを与えたりとして過ごしていく。

 

 そんなこんなで休み明けの月曜日。いやまあ、実際はなんたらの日、というらしいが俺が勝手に月曜日と呼んでいる今日。

 いつものように、討伐証明部位をギルドへと向かうと、ギルド職員が慌てた様子で声をかけてきた。


「よかった! ちょうどこれからシドーさんを呼びに行こうと思っていたんですよ!」

「どうしたんだ? もしかして、護衛の依頼が出されたのか?」


 俺がギルドから呼び出しを受けるとしたら、それくらいだろう。

 しかし、ギルド職員の表情は少し変わる。


「少し違うのですが……ストントン村の方から依頼が出されまして。今、村近くにゴブリンが現れたようでして……村の警備をしてほしいそうなんです」

「ゴブリン……? そんなに警備が必要なほどにいるのか?」


 確かに、厄介な魔物だ。俺だって、素手で挑んでくれ、と言われたら困るような相手だが、わざわざ依頼が出されるほどなのだろうか?


「……そうですね。ここ最近増えていたゴブリン達の中から、どうやらリーダーに進化した個体が出てきてしまったようでして……そいつらが村周辺で目撃されているようです。万が一、他にも進化している個体がいた場合、恐らくかなりの脅威になってくると思います……」


 北の森でもかなりのゴブリンがいたが、南側にもいるのか。

 ……いや、その中間地点あたりにゴブリンの巣があり、そこから餌でも探しにあちこちにゴブリンが現れているのかもしれない。

 どちらにせよ、数が多いとなると面倒そうだな。


「……村の警備か。ただ、俺たちは迷宮に入りたいんだが……」

「はい。それは分かっていますので、あくまで数日になります。現在、騎士の方たちもゴブリンの巣を探して動いていますので、その間だけ村を守っていただければと思っています」


 それなら、確かにそれほど拘束されるわけではないか。


「警備の依頼は俺たちだけなのか?」

「いえ、冒険者を集められるだけ募集しています。今日中には全員で馬車に乗って移動してもらうということなので、どうしましょうか?」


 馬車を手配してくれるのなら、楽でいいな。それに冒険者がそれなりにいたら、一人当たりの仕事量も少なく済みそうだ。


「……そうだな。分かった。その依頼、受けようと思うけど、皆いいか?」


 俺の問いかけに、リアたちはこくりと頷いてくれた。

 よし、問題なさそうだな。

 ギルド職員もほっとした様子で息を吐いていた。


「ありがとうございます」


 とりあえず、これで依頼を無事完了できれば、Dランク迷宮での狩りも始められそうだな。




 冒険者を集め次第出発するということで、とりあえず街にいる間にやるべきことをやっておく。

 まずは昨日お願いしていた魔物の解体だ。


 こちらはもう終わっていて、素材はすべて売却。

 銀貨五十枚ほどになった。

 ワイルドボアの素材が思っていたよりも需要があったようだ。


 ゴブリンと比べると、肉なども食用として使われているらしいので、素材として買い取ってもらえる部分が多いようだ。

 それから、念の為にと魔力回復薬などを購入して、俺たちの準備は完了となる。


 一度、待ち合わせ場所へと向かうと、すでに数名の冒険者たちが集まっていた。

 ギルド職員もいるところをみるに、ここで間違いなさそうだ。


 俺もそちらへと向かうと、年齢の近そうな冒険者に声をかけられる。


「あっ、君ももしかしてストントン村の警備依頼を受ける冒険者?」


 若い男性冒険者は最低限の身なりをした仲間を連れている。……奴隷、っぽいな。

 ぱっと見で奴隷パーティーなのかどうかはわかりづらいのだが、彼の場合はすぐに分かってしまった。


 奴隷たちの服装が貧相だったからだ。

 まあ、奴隷には最低限度の生活をさせればいいのだから、別に着飾った服とかを与える必要もなければ、食事をさせる必要もない。

 これがむしろ普通なんだろう。……リアたちの着たい服とかを確認し、召喚している俺の方がおかしいんだよな。

 思うところはあるが、おかしいのは俺なので、何も言うまい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る