第29話


 もうハンドガンの反動は気にならないくらい体も強くなっていたが、ショットガンを余裕で扱えるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだ。


 念の為、ポンプアクションを行い、弾の装填を行う。

 ウッドマンへ構えながら近づいたが、ウッドマンの体が霧のようなものを出し、体の先のほうから消滅していった。


 間違いなく、倒した……でいいだろう。

 ふうと息を吐いていると、三人がこちらにやってきて笑顔を浮かべた。


「やったわねシドー様。かなりの威力だったわね」

「その分、音も反動も凄かったけどな。ちょっと肩痛いし」


 反動で肩にぶつかってしまった。

 俺の使い方を見ていたナーフィが片手を差し出してきたので、ショットガンを渡す。

 彼女はすっと構え、すぐに放つ。反動などは特に気にせず、ポンプアクションを合わせ、連射していく。

 もう、コツを掴んだようだ。


「ん」

「……おう。次からはナーフィが使ってくれ」

「あたしも、ちょっと試してみたいわね」

「……わ、私も使えるように練習しますね」

「……ああ、分かった」


 これもまた、人数分用意する必要があるかもしれない。

 ……い、いやそこはまた俺の魔力に余裕が出てからでもいいか。


 とりあえず、ショットガンを召喚するかについてはまた後で考えるとして、ウッドマンがドロップしたアイテムを確認する。


「魔石、少し大きいな」


 いくつかのウッドマンの素材とともに大きめの魔石がドロップしていた。

 回収を手伝ってくれたナーフィにお礼を伝えると、頭を撫でるように向けてきたので軽く撫でる。


「ありがとな、いつも」

「ん」


 ナーフィは満足気に頷き、リアが口を開いた。


「魔石が大きいのは、ボスモンスターのものだからね。これなら、銀貨一枚くらいで買い取ってもらえるかもしれないわ」

「それなら、ひたすらボスモンスターを狩ってたほうが効率いいな。再出現するんだよな?」


 ショットガン一発ぶち込めば、おそらく体力の大半は削れるだろう。下手をすれば一発かもしれない。

 それなら、スモールウッドマンよりこっちと戦っていた方がいいだろう。

 闇雲に探すよりは断然そのほうがお得だ、とか呑気に考えていると、リアが考えるように顎に手をやる。


「再出現は時間経過でするけど……確かに、そうね。普通、こんな簡単にはいかないんだけど……ショットガンのおかげもあってすっごい楽に攻略できそうね」

「……ショットガン、召喚して良かったな」

「ボスモンスターって結構強くて、色々なアイテムを駆使して戦うのが普通で、倒し切っても銀貨一枚分くらいの消耗しちゃうのが普通だけど……消耗品も全部召喚できちゃうし……これが最高率なのは確かだと思うわ」


 なるほどな。確かにゲームとかでもそうだが、ボス戦となればある程度アイテムを使うこともあるだろう。

 もちろん、レベルに余裕があればそんなことはないのだが、ギリギリならば回復アイテムをたくさん使って乗り切るものだ。


 そういった諸経費がかからないのが、この召喚魔法の何よりも強い部分かもしれない。


「じゃあ、あちこち歩き回るのも疲れるし、ここで待機してウッドマン狩りでもしていくか」

「シドー様がそれでいいって言うなら、あたし達も同意見よ。ボスモンスターもすぐに復活するわけじゃないから……どっちがいいかは分からないけどね」

「それなら、ストップウォッチで測ってみるか」


 スマホの時計を取り出し、そこからストップウォッチのボタンを押す。

 倒してからすでに時間が経ってしまっているので、多少の誤差はあるが。 


「……スマホで時間も測れるの?」

「まあな。どのぐらいの時間で復活するか……それまで何か食べてるか?」


 俺がそう言うと、三人はぴくりとエルフの耳を少し動かした。

 ……わかりやすいやつらだ。


「そ、そうね。ボス戦もあるんだし……またおやつにしましょうか」

「それじゃあ、適当におやつ出していくぞ」


 手当たり次第に、思いつくお菓子を召喚していく。

 チョコ、クッキーなどなど。俺はポテチが食べたかったので、コンソメ味のポテチを召喚して食べ始めた。

 すぐにナーフィに取られてしまい、皆でお菓子タイムを楽しみつつ、ボスが復活するのを待っていった。


 ウッドマンが再出現したのは、それから約十分後だ。

 ストップウォッチでの表示は九分くらいだったが、記録を始めたのが遅かったからな。


 おおよそ、十分だ。

 俺たちがボス階層を歩いていると、ウッドマンが姿を見せた。


「ん」


 すぐに動き出したのは、ナーフィだ。彼女の手にはショットガンが握られている。

 ナーフィがそれまで使っていたハンドガンは、アンナが二丁拳銃となっている。

 彼女は慣れた手つきで両手のハンドガンを連射していく。


 ……亜人の身体能力があるからだろうか。彼女はまったく上体がブレることなく、すべてをウッドマンにぶつけていく。

 そうなれば、ウッドマンの注意はアンナへと集まる。

 攻撃を仕掛けてくるが、アンナはバックステップで距離を取る。


 ナーフィほどではないが、アンナも動きのキレはいい。

 しなやかな細い体というのもあって、動きやすいんだろう。


 ……ていうか、ナーフィはあんな大きな胸を揺らしながらで痛くはないのだろうか?

 この世界にも下着という概念はあるようで、俺が適当に突っ込んでおいた下着類を彼女らは身につけていた。


 ……ナーフィとリアのブラジャーは結構大きかったんだよな。おそらく一番はナーフィだろう。

 いかん。変なことを考えている場合ではない。

 そのナーフィにも、攻撃が向けられるが、リアとアンナの援護もあってナーフィには当たらない。

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