第16話
「そうね。それでいいと思うわよ」
「ああ、色々教えてくれてありがとな」
「……奴隷相手に感謝なんて必要ないわよ」
「いや、ぶっちゃけ知らないことが多いからな。よりいいと思ったことは言ってくれると助かる」
知らないと、検討することもできないからな……。
迷宮に潜るのはいいとして、それぞれに新しい服も用意しないとな。
できれば、防具とかもか。
防具もいずれ召喚する必要があるよな。
中に着込むタイプの防弾チョッキのようなものがあればいいだろうか? いや、それよりは防刃を優先したほうがいいか?
それか防具はこの世界で揃えたほうがいいだろうか?
でも、地球の技術力の方が高そうだし、基本的には召喚した方が良い気もする。
まあさすがに、ミスリルとかオリハルコンとか異世界特有の装備品と比べたら負けるかもしれないけど。
まあ、防具とかは危険そうなら準備をするくらいでもいいか?
ハンドガンで無双できている間は、敵に攻撃されることもないだろうしな。
順調に狩りをしつつ、途中途中でハンバーガーで栄養補給だ。
そろそろ、お昼の時間だ。途中、何度もハンバーガーを食べていたナーフィだが、あれはあくまでおやつのようで、まだまだ食べたそうだ。
とりあえず三人の分ハンバーガーを用意し、俺はサラダを皿に出してドレッシングをかけた。
……俺、あんまりお腹空いてなかったからな。
そうしたら、三人が興味津々と言った様子で覗き込んできた。
「……ご、ご主人様。そちらはなんでしょうか?」
アンナが珍しく問いかけてきた。
「サラダとドレッシングだ……食べてみるか?」
めちゃくちゃ気になっている様子だ。食欲旺盛なだけではなく、食事自体が好きなんだろう。
「……は、はい」
「それじゃあ、一口どうぞ」
俺はフォークとお皿を取り出し、一口分をとってアンナの方に差し出す。
すると、アンナは少し恥ずかしそうにしていた。ああ、しまった。
特に考えずにあーんをしてしまっていたようだ。
さすがに食べにくいだろうしと思っていると、ナーフィが食いついた。
もしゃもしゃと食べていた彼女は目を輝かせてから、
「ん」
要求してきたので、皿をもう一つ召喚してサラダを並べる。
ドレッシングをかけてやると、彼女はかきこむように食べていく。
フォークの持ち方は赤ん坊のようだったので、少し注意をしながら、リアたちの分も用意した。
二人は一つの皿に乗ったサラダを口に運ぶと、めをみひらいた。
「……!? これは、なんですか!? 何か、とても、とても美味しいです! これがドレッシングですか……!?」
「……凄いわね、これ。野菜ってあたしそのまま食べるのに抵抗あるんだけど、これならいけるわ……」
「それは、たまねぎのドレッシングだな。味は色々あるし、試してみるか?」
いくつか召喚しておいたドレッシングを取り出すと、ナーフィはハンバーガーを飲み込むように食べ、こちらに顔を向けてきた。
まだまだ、新しいサラダを食べたいようだ。
俺は市販のサラダを召喚し、その袋を開けてナーフィの皿に出してやると、彼女はすぐにドレッシングを開けて少しかけて食べていく。
先ほどかけたのはごまドレッシングだ。彼女は一口食べると、嬉しそうに頬を押さえた。
「ん!」
またおかわりを要求だ。ドレッシングをかけているとはいえ、サラダだからな。
ハンバーガーよりは勧めやすい。
実際は色々なものが混ざっているが、それは置いておこう。
リアも別のドレッシングを取り出し、サラダへとかける。
一口ぱくり、と食べると彼女は頬を緩めた。
「……これも、美味しい。シドー様の世界って、凄いわね……」
「……それは良かった。あんまりかけると体によくないから、それだけ気をつけてな」
こくこく、と三人とも頷いているが、食事のペースはかなりのものだ。
……相変わらずの食欲だことで。
結局それから数十回、サラダを召喚したところ三人は満足してくれた。
元気一杯になったからか、三人はさらに意欲的に魔物狩りを行ってくれる。
クックックッ。
完全に作戦通りだ。
俺の召喚魔法の魅力に取り憑かれた彼女たちならば、恐らく俺の思い通りに経験値を稼いでくれることだろう。
リアたち自体が強くなれば、より強い魔物とも戦えるようになるわけで、そうなれば生活費に関しても何も心配しなくて済むだろう。
ジャンクフードに漬かってしまった彼女たちは、もはや罠にかかった獲物そのものだ。
それからまたしばらく戦闘をしてから、陽も傾いてきたので街へと戻った。
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