第14話
「……し、シドー様。大丈夫?」
「……なんとかな」
リアに心配されたが、俺はなんとかハンドガンを三つ、用意した。
ついでにマガジンも召喚しておき、彼女らに渡しておく。
サイズは知らないが、すべての人間が収納魔法を持っているらしいからな。
「シドー様。奴隷契約している場合、ご主人様と奴隷の収納魔法を連結させることもできるわよ?」
「……そうなのか?」
「ええ。どこまでの権限を与えるかはシドー様のほうで決められるから、こういった消耗品はシドー様の収納魔法を経由した方がラクなんじゃない?」
確かに、そうだな。
もう細かいことを考えている暇はなかったが、俺はその場でごろりと大の字になって休んでいた。
三人ともハンドガンを持ちながら、狙いを構えてみるなど色々とやっていたが、俺はしばらく休憩。
休んでいると、先ほどのゴブリンの死体の臭いに釣られたのか、ゴブリンたちがやってきた。
一人ならば大変だったと思うが、リア、アンナ、ナーフィがいる。
「た、対応……任せた」
俺はまだ回復していないのでそう伝えておく。もしも、奴隷契約がなければ見捨てられていたかもしれない。
ゴブリンの数は五体いたのだが、ナーフィがハンドガンを滑らせるように動かすと、五体が倒れていた。
……え、マジで?
ナーフィはすでにハンドガンの使い方を完全に習得したようだ。
呼吸するようにゴブリンを仕留めて見せた。
……戦闘センスがある、とは話していたが、彼女はとんでもないのかもしれない。
少し休憩をとったことで、俺も体を起こせるくらいには回復した。
そんな俺に、リアが問いかけてきた。
「……シドー様の魔法って、なんでも作り出す魔法ってわけじゃないのよね?」
「ああ、異世界のもの……俺からしたら自分の世界のものを召喚する魔法だ、と思う」
俺も自分の魔法についてはまだ分かっていないことも多い。
ただ、何度かこの世界のものを召喚しようとして失敗したので、たぶんこの認識で間違いないだろう。
「ん」
「はいはい」
俺はハンバーガーを召喚し、ナーフィに渡した。
むしゃむしゃと美味しそうに食べる彼女に釣られるようにして、リアとアンナも控えめに要求してきた。
……明日から、別のものを食べさせようと思っていたが、今日から考えた方がいいかもしれないな。
それからしばらくして、俺も動ける程度には回復したので、戦闘を行っていく。
ついでに、休んでいる間に収納魔法のアクセス権限関連も対応しておいた。
ひとまず、ハンドガンとマガジンと食品に関しては手を出せるようにしておいた。
ただし、食べ過ぎないこと、とだけは伝えておいた。特にナーフィ。
これで、今後彼女らだけで行動する場合も、俺は必要なものを収納しておくだけで済みそうだ。
理解したからなのかは分からないが、ナーフィは俺がいる場合は俺に手を差し出して食品を要求してきていた。
まあ、ナーフィならいくらでも食べさせてあげるつもりだ。
なんたって、ナーフィの戦闘能力が非常に高いからな。
もちろん、リアとアンナも俺なんかより優秀だ。
ハンドガンでバンバンゴブリンを射抜いてくれるので、俺はもうみているだけでいい。
ま、まあこんな生活を夢見ていたわけであり、文字通り成功しているとはいえ、ご主人様としては少し情けない。
完全に三人の食事を用意する係となったので、もはやどちらが使用人か分からない。
ま、まあ、この武器を提供したのは俺だし、彼女らがこうして元気よく動けているのは俺の食事のおかげだ。
つまり、これは実質俺の手柄として見ていいはずだ。
三人が魔物を倒していくと、そのいくらかが俺の方へと経験値と入ってくる。それで、ちゃんとレベルアップもしている。
これがあるから、奴隷は大事なんだよな。
今頃、城に残った連中はどんだけ強くなっているんだろうか。
田中くんと佐藤くん、元気にやってるかなぁ……。
そんなことを考えながら、俺も時々ゴブリンを仕留めるためにハンドガンを連射する。
そして、外しまくってようやく仕留めると、ナーフィが俺の背後からぎゅっと抱きついてきた。
お、おっぱいが当たっている。ナーフィは全く気にしていないようで、俺の体を使ってハンドガンの使い方を教えてくれる。
……しょ、正直言って胸の感触しか覚えていません。
「……」
ジトーっとリアが見てきていたが、仕方ないだろう。
俺だって男の子なんだぞ?
……落ち着け、俺。
こんなので動揺していたらダメだろう。俺が目指すべきは奴隷を従えられるゲスなご主人様だ。
おっぱいの感触を楽しむくらいの余裕はもってもいいはずだ。
ナーフィが俺から離れたところで、ハンドガンをもう一度構える。
さっき教わったように放っていく。おっぱい、おっぱい、おっぱい……いや、違う。
煩悩を追い出すようにしながら、ハンドガンを放っていくと、とりあえずゴブリンを仕留められた。
……また失敗したら、胸を押しつけてもらえるかもしれない。いかん、煩悩よ消えろ。
ナーフィは純粋な気持ちで教えてくれているわけなんだから、変なことを考えてはいけないだろう。
「そういえば、三人の中で魔物の解体ができる人はいるのか?」
「できないわ」
「……私も」
「んー」
ナーフィは首を横に振った。一番できそうな気はしたが、彼女も難しいか。
「なら、専門の人に任せた方がいいか」
「素材のすべてを活かしたいのであれば、その方がいいと思うわよ。特に、シドー様って勇者なら無尽蔵の収納魔法使えるんでしょ? そこに入れて持っていけばいいじゃない」
「……そうだな」
「手数料は取られちゃうと思うけど、自分たちで解体している時間で魔物を狩っていた方がレベル上げの効率もいいし、まあ覚えろっていうなら覚えるけどね」
……どっちでもいい、というのが本音だったがリアの意見に同意だ。
俺たちは戦闘効率がいいんだから、経験値のことだけを考えるなら戦っていた方がいいだろう。
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