エピローグ

 ……〝ピーチ少年〟こと川上ピーチ、それはまた推測ではあるが、川上大海もしくは川上妖海らの生まれ変わりなのかもしれない。彼ら川上家の始祖が、ウサギたちとどういう関係をもっていたのかも、謎である。そして何より、ピーチ少年の能力がなにゆえに開花していったのかも、不明な点は多い。


 しかし、この船がウサギたちを乗せて、地球へ墜落してしまったらしい事実と、今また、ウサギたちは夜空へ帰ろうとしていることは、確かである。


 ……ウサギたちが全員、船に乗ると、ピーチ少年は餅団子に目もくれずに、船を持ち上げた。そして「天空飛翔」で夜空へ飛び立っていった。あの星を目指して。そう、あの小さな天体こそが、ウサギたちの真の故郷なのだ。ピーチ少年は直感でそれを理解しているようであった。


     *


 今度の宇宙の旅は以前に比べると、格段に快適なものであった。どういう原理か知らないが、船の周りには大気の層が形成されていたからである。


 川上大海がこの船の墜落を目撃したときから、遙かな時代を経ている。にもかかわらず、その機構の一部、空気で船を包み込むという機構がまだ正常に機能しているとは、いったい、いかなる科学技術を用いているのか、現代の科学者がこの船を見ていたなら、一も二もなく研究の対象としたことであろう。


 とにかくである。ピーチ少年は無事、ウサギたちをあの小さな天体に、ウサギの星に送り帰すことができた。そして地球を発った日から一週間後、ピーチ少年は何事もなかったかのように、帰ってきた。帰るなりピーチ少年は開口一番、こう言うのである。


「今日の夕飯はお餅がいいな!」


 食いしん坊であった。


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