ニンゲン・ゲーム

桐絵妃芽

　「お前たちがしている苦労なんて人生の苦労のほんの一部だ。」

　昔、そんな事を言っている人がいた。

　今思えば本当に頭の悪い言葉だ。どうせ誰かの受け売りなのだろうが、そうまでして若者をいたぶりたいのだろうか。理解に苦しむ。第一、語呂が悪い。「苦労」を短い間に2回も言うところからして駄目だ。何かを人に説く気があるのなら、それくらいの配慮はしてほしい―――。

　いきなりただの悪口になってしまった。とにかく私が言いたいのは、人間を一括りにして語るべきではないということだ。どんな状況でも。確かに私の人生にはもっと苦労があってもいいのかもしれない。でもそうじゃない人もいるし、そうじゃない人の方がきっと多い。日本の10〜20代の人の自殺者数は3000人を超えるそうだ。この人たちにも、もっと多くの苦労があるはずだったのだろうか。この人たちは、ただ自分の人生から逃げる弱い人だったのだろうか。そうじゃない、そうじゃないと信じたい。だから今日も心のなかでこう叫ぶ。

　私の名前は “朝日心奈（あさひここな）” 16歳。日本で、いや世界で一番幸せなニンゲンだ。