第22話 閑話 1 ~エルフィーナとパソコン~
4月はじめ、僕の仕事の多くは、パソコンでやらなきゃならいんだ。
「エルは、できるかな、これ?」
僕は、自分の手元を見つめながら、彼女のことがとても心配になってきた。
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「エル先生、今までにパソコンを、使ったことがありますか?」
「パソコン?……何ですかそれは」
エルにとって、初めて聞く物の名前なんだろう。
でも、職員室の机の上には、それがあった。自分専用のパソコン(PC)。デスクトップで24インチモニター画面、Bluetoothマウス標準搭載。校内ランで共有のハードディスクにデータを保存。クラウドに自動バックアップ。だから、どこからでも仕事ができる。もちろん自分の家からもだ。
家での作業用にも14インチのノートPCも貸し与えられている。
スマホも与えられ同期して使うように指示されている。もちろん、必要事項の連絡は、メールなんだ。
「エル先生、これがパソコンですよ。児童に配る学級通信や時間割、その他のお便りなどを作成します。今は、成績管理や管理職への報告文書などもすべてこのPCを使うんです」
隣同士に机を接している
今は、あまり使わなくなったパソコンの使い方という簡単なハウツー本も、僕は貸したんだ。
「へー、これがマウスっていうんですね」
と、言って、エルは、右手でマウスを軽く握っていた。
愛しそうに彼女は、マウスに向かって何か話しかけていたんだ。
すると、マウスから不思議な淡い緑の光の球形の光が1つ飛び出してきて、エルの右手とマウスの周りをぐるぐる回り始めた。もちろん、周りの人には見えない。見えるのは、エルと僕ぐらいである。
少し離れたところでそれを見ていた僕は、頭を抱えてしまったが、
「まあ、いいか……」
と、割り切ることにしたんだ。
エルは、こうやって自分が操作しているように見せかけることで、パソコンで仕事ができるんだ。
しばらくして、エルが山田先生に何かを見せていた。
「山田先生、できました……」
すると、山田先生が、大変驚き、感嘆の声をあげたんだ。
「やあ、素晴らしい!
確かに、昨年度の私の通信を見本にあげましたが、それより何倍も上手だ。
初めてPCを使ったなんて思えないですよ」
6年団の先生達が、エル先生のPCのところに集まってきて、みんな驚きの声をあげた。
まあ、あれは精霊の力だけど……本当に凄いんだな、まあこれで安心だ。何が凄いんだか分からないが、僕は、ホッとため息を一つついてまた自分の仕事に戻った。
(つづく)
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