王子様の王城生活は気楽じゃない
第1話 いらんことする人はだいたい人の話を聞いてない
恋に盲目になった国王陛下が、最愛の奥さんとの間に出来た子供を国王にさせようとしたことが明るみに出てから四年たちました。
六歳だった僕は十歳になり、三年後に王立学園に通うそうだよ。
この世界、前世における小学校までの基礎教育は、たいていガヴァネスかチューターから習って、そこから専門的なことを学園で学ぶらしい。
で、王立学園には四部門ある。
まずは領地経営科。これは跡取りの子息や令嬢向けのコースね。
次に淑女科。後継者ではない、いずれ他家に嫁ぐ令嬢向けのコース。
三つ目が文官科。跡取りではない子息や令嬢が王宮や領地持ちの高位貴族の執政官を目指すコース。
四つ目が騎士科。言わずもがな、武官として目指すコース。
この四部門の他に魔術師として身を立てていくコースがあるんだけど、これは王立学園ではなく、魔術塔という専門の学校? 組織? とにかく、そこに行く。
ラーヴェ王国の大半の貴族の子供は、王立学園にある四つの科のどれかを選んで、十三歳から十八歳まで通うことになっているわけだ。
僕は前世の記憶があるから四則演算はもうすでにできるし、この国の言語の読み書きもガヴァネスやチューターから学ぶよりも先に、シルトとランツェに教わってしまった。
あと、ラーヴェ王国の歴史。ほら、例の寝る前の読み聞かせで、暗記できちゃうぐらいに聞かされて、すっかり覚えちゃってるんだよ。
ガヴァネスやチューターが来る前に、基礎教育は修学済みで、改めて学ぶ必要がない。だから現在は基礎教育のもう一歩先のことを習ってる。
近隣諸外国の言語と歴史と特産、とか。あと、フルフトバール領のこととかな。
これ、王立学園行く必要ある?
進むコースは領地経営科になるけど、そこで学ぶことって、通う前に教わってしまってないか?
そう思っていたら、僕に仕えてる双子の使用人が、王立学園に通う最大の目的は、同年代の貴族間の顔繫ぎと言う社交です。と教えてくれた。
あー、うん、それな。それか。じゃぁ行くしかあるまいよ。
高位貴族だからって、何でも一人でできるわけねーからな。隣接領の協力とか時にはあるし、友好深めていたら、そういうときの話だって進めやすくなるし。
つまり、友人をたくさん作って、でもただ作るだけじゃなく親睦を深めよと。ついでに、跡継ぎではない有能な人材をゲットするわけね。
まぁこの辺のことは三年後の僕に任せよう。うまくやっておくれ三年後の僕。
四年前に側妃が宿下がりし、第一王子の王籍離脱が決まった後、宰相閣下とおじい様の攻防の結果、僕は王族用の帝王学を学ぶことになった。
王族では帝王学と言っているけど、これはいわゆる貴族の当主教育だ。
僕は成人したら王籍抜けるし、そうなったら、マルコシアス家とフルフトバール侯爵を継ぐ。つまり僕は、おじい様の後継者。
どのみち、その手の教育も受けることになる。高位貴族の当主教育と王族の帝王学がどれぐらい違うかわからないけど、まぁ受けても損はなかろうって思ったから、条件付きでいいよと了承した。
ここまではね、よかったのよ。ここまでは。
その話をもってきたのが宰相閣下だったし、その帝王学を教える教師も、宰相閣下が手配してくれるんだろうって思ってたんだ。
そうしたらさ、今までずーっと側妃と第一王子を無視して放置してた国王陛下がな、いらんことしてきたわけだ。
何してきたと思う?
王家の教育係を勝手にこっちに派遣してきたんだよ。
まぁそんなことしてきた理由は、なんとなーくわかるよね。今までの詫びとか、やらかした罪滅ぼしとか、そんな感じなんだろうって言うのは。
相手はなんも言ってこなかったけど。それどころか、今まで構ってもらえなかった父親に王家の教育係を手配してもらって嬉しかろう? って感じだったけどね。
それで、その手配されてきた教育係が、いわゆる基礎教育を教えるガヴァネス、王族専用のマナー講師、王宮の護衛騎士団長、その三名。
もう、基礎教育はとっくに終わってんだよ! こっちはその先のことを学んでんの! それから護衛騎士団長、何のために派遣してきた? 剣術を教えるため? 馬鹿かおめー。まだ体が出来上がってない子供にそんなの教えてどうすんだよ。まずそれよりも先に、基礎体力作りだろうが。しかもそれは王宮の護衛騎士団長にさせることじゃねーだろう。仕事放棄させんな。
宰相閣下と国王陛下に、即行でクレーム入れた。
ガヴァネスと護衛騎士団長が僕のいる宮に来た時点で、宰相閣下に連絡を入れたらすぐに駆け付けてきて、ガヴァネスと護衛騎士団長に聞き取りすると、国王陛下からの要請だって、カマかけるまでもなくゲロったわけよ。
なぜそんなことを訊ねられるのか、わからないだろうガヴァネスと護衛騎士団長に、僕の教育は後見人であるおじい様と宰相閣下の擦り合わせで可決され、国王陛下はそこに携わることができないと説明したら、納得できないような顔をされてしまってね。
仕方がないから、二人を連れて宰相閣下と一緒に、国王陛下の執務室に行ったわけよ。
僕の姿を見た途端、国王陛下は表情には出してなかったけど身構えた。でもガヴァネスと護衛騎士団長も一緒にいるのに気が付いてから、お礼を言いに来たと思ったんじゃないかな?
嬉しいだろう? 今までの詫びだから気にすんな。声に出してそんなことは言ってないけど、態度と表情と雰囲気から、そう言いたいんだろうって、もうありありと察してしまった。
良いことをしたと、ご満悦な様子の国王陛下に、冷や水をぶっかけたのは宰相閣下だ。
「陛下、リュ……、アルベルト殿下のために貴方がしていただけることは、私とマルコシアス卿が決めた事柄を了承することと、出来上がった書類にサインをすること、ただそれだけです。それ以外のことは、一切、手出し無用でございます。何もしていただかなくて結構です」
いやぁ、宰相閣下から侮蔑を込めた視線で、淡々と説教されるあの時の国王陛下の顔は見ものだったわ。
国王陛下ちゃん、あの時のおじい様と宰相閣下のお話、難しくてわからなかったのかな? わからなかったら、すぐそばにいる人たちに聞こうね? ついでに間違ってるかもしれないから宰相閣下に答え合わせしてもろて?
できるかな? できるよね? できなくてもやれよ。
僕のことでおめーができることは、決まったことに頷いてサインするだけだって言っただろ。
それ以外の余計なことすんな。
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