第二章 十五節

オードリ城の背後にある森で、捜索隊が内通者であろう者を狩猟小屋で発見した。


しかし、発見した時には既にその者は殺されていた。


殺したのは、オーウェンだ。




「何故殺した。コイツは重要な手がかりだったんだぞ!!」




リディがオーウェンを問い詰める。




「彼が襲い掛かって来たんだ。だから抵抗したまでで」




「お前のせいで、全てが台無しだ!!」




リディは激情し、オーウェンの襟を締め上げて壁に叩きつける。




「……お前が内通者か?」




「えっ……」




ロレインが、オーウェンに向かって放った言葉にその場に居る皆が一瞬固まった。




「な、何を言うのです。私は子供の頃からの付き合いですよ」




「そんなの関係ねぇよ、理由はいくらでもあんだろ。そもそも何でお前がここに居んだよ、白竜の奴等はアルフレッドの命で吊り篭の処理だ。……大方バレそうになったんでお前が殺し、犯人候補から逃げよう……って所か?」




「ま、待ってくれ、アルフレッドがそんな命令を出したのを私は知らない。最初の捜索隊と共に出ていたんだ」




隣で話を聞いていた捜索隊が頷き肯定する。


これは嘘じゃない、とロレインは見た。




「それでも弱いな……一応殺すか?」




「わ、若!?」




リディが驚きの余り声を漏らす。


自分よりも長い付き合いの者をこんなにアッサリと殺すのか、と。




「若!!やめてください!!」




「どうしたリディ、何で止める」




「まだ確証はありません、ここで殺したのならまたアルフレッドにどやされるでしょう。なので、……拘束でどうでしょうか?」




激しい鼓動が耳に聞こえてくる。たった数秒が何分にも感じられる。


もし、これで私が共犯者と疑われたらここで殺されるのか?しかし、私は正しい事を言った。


昨夜の民間人ならばまだ分かる、しかし仲間であって少しの疑いのある者を殺すのはオカシイ。




ゴクリと唾を飲み、ロレインの返答を待つ。




「それもそうか、よし拘束だ。流石俺の補佐だな」




ポンと肩を叩かれ、リディは止まっていた呼吸を再開した。


オーウェンはというと、目を瞑りただ黙っている。その後、手足を鎖に繋げられオードリ城の地下牢へと入れられた。








アルフレッド達はロレインの過去の話を聞く途中、オーウェンが拘束され地下牢に入れられた事を部下に聞いた。




「オーウェンが!?何でだ!?」




「詳しい話はまだ、しかし内通者の疑いがあると」




どうなっているんだ、内通者はロレインの城にいた筈。


元からこのオードリ城にいたオーウェンは関係ないはず。




事情を聞く為、ロレインの部屋に急いだ。




「何ですか、騒々しい」




ロレインの部屋の前ではリディが立っていた。




「オーウェンが拘束された訳を、聞かせてくれ」




「いいですよ、しかし若は今日誰も部屋に入れるなとおっしゃっているので私でよければ」




「ああ、構わない」




リディは、ありのままをアルフレッド達に伝えた。




「ですので、彼は拘束されています。この内通者の件は思った以上に複雑です」




「そうか、ありがとうリディ。オーウェンは僕にとって大切な友達なんだ。ロレインの補佐が君で良かった」




「か、構わないですよ」




アルフレッドは深く頭を下げた。


それに照れながら、リディは無精ひげを弄る。




しかし、事件は急展開を迎えて終了する。


夜が更ける頃、激しい吹雪の中オードリ城の門兵が殺されたのだ。




「この吹雪じゃ、犯人は死んだだろう」




オーウェンの疑いは晴れ、それから冬が過ぎ去るまでオードリ城で人が殺される事件は起きなかった。








薄暗い部屋の中で、暖炉の火を眺める。


それは、かつて最愛の者を供養した光景を思い起こさせる。


震える手が、彼女の残したたった一つの贈り物だ。








時は、数か月前に戻り、


三大国の王達がハドマス大国で一堂に会していた。


円卓を囲む三大国の王達とその側近達。




「この大事を決める場に我が大国を選んでくれた事、快く思うぞ」




ハドマス大国の王、民は彼の事を騎士王と呼ぶ。


男でも惚れる美貌を持ち、戦場では正々堂々と戦う。加えて大国の民を誰よりも思う姿に騎士王の名は相応しい。




「感謝するのは、余の方だぞハドマスの。知っての通りミケアを焚きつけたのは余である。それに続いての此度の話受けて頂き感謝する」




グランデルニア大国の王、王の中で一番高齢なその老人は一見枯葉の様に弱々しく見えるが、鋭い瞳にはこの場を飲み込む力がある。




「ミケアの件があったから我等が集まっているのであろう。馴れ合いはいい、早速本題に入ろうでは無いか」




アレッド・ローン大国女王、最年少の王でありながらも他の大王達に引けを取らぬ若さと言う炎を供えている。




「ならば単刀直入に言おう。此度の戦、我らが軍を率いてかの地レグネッセスを滅ぼそうではないか」




出陣は年明けの春、それが新時代の幕開けだ。






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昨日は、諸事情により更新出来ませんでした。

申し訳ございません。

その為本日は二話投稿します。

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