第三章 魔王の配下をリバースさせちゃうYO

第12話 助けた村人たちが全員リバースしたぞ(涙

 城を出発したオレたちは、一日もしないうちに魔物に襲われた。


「とう!」


 チチェロの竜巻のような回し蹴りによって、オークの群れが撃退される。

 

「せや!」


 クッコ姫の剣が、アラクネの糸を本体ごと断つ。


「これで、ラストっス」


 フゥヤが放ったスケルトン軍が、残党を蹴散らした。


 オレ、なんにもしていない。


 まあ、これだけのツワモノがいれば、大丈夫だろう。


 その後、他の騎士たちもがんばって、魔物を追い払いながら進む。


 そこでも、オレはまったく動かなくてもよかった。



「なあ、チチェロ。オレは本当に、何もしなくていいのか?」


「王子の手をわずらわせるわけには、まいりません。馬車でふんぞり返っていてくだされば、OKです」


 そんなもんかねえ?


 でも、なにもしないってのも手持ちぶさたすぎる。


 夕飯くらいは、作ろうではないか。


 騎士たちが獲ってきたイノシシを分解して、カレーにした。

 イノシシだってカレー粉をまぶせば、臭みが取れるに違いないと睨んだ。

 チチェロの料理する姿をこっそり覗いていたから、一応オレだって簡単なものくらいは作れるのだ。

 ヨメになったら、オレと一緒にゴハンをつくろうNE❤


「おお、計画通り」


 肉の臭いがあんまり気にならない。それどころか、めちゃうまそうじゃん。

 異世界のイノシシって、そんなに臭くないのかもしれないな。


「うむ。味も申し分ない」


 味見してみると、ちゃんとブタっぽいエキスが出てうまかった。脂っぽさが、どことなくインドカレーっぽい。小麦粉でナンを焼いても、よかったかも。

 


「王子! お料理はわたしがやりますから!」


「いやいや。このまま何もせず、ただ面倒を見てもらい続けるわけにはいかぬ」


「そんな。それが我々の役目なので」

 

「だったら、なおさらだろ。オレはお飾りとして、魔王討伐に向かうんじゃない。ただ『魔王を打ち倒した』という功績目当てに、旅をしてるわけじゃないんだぜ」

 

 戦っている兵隊をねぎらうのも、オレの重要な仕事だ。


「マジ、性格がイケメンすぎるっス。こんな貴族や王族、見たことないっスよ」


「だな。私を含め、戦闘狂な王族は多い。だが、部下を労るような王子など、どこにもいなかった」


 姫やフゥヤはそういうが、オレは元々、庶民だからな。

 純度一〇〇%の王子では、ないんだよね。


「よし。コメも炊けたことだし、いただくとしよう」


 全員で、いただきます。


「ああ、うんっ、ま」


 久々のカレーライスを口にしたが、こんなにうまかったのか。

 野外学習で何度かカレーは作ったことがあるけど、ここまでおいしくはなかった。


 慕ってくれるみんなが、いてくれるからだろうな。


 どんなにうまいメシでも、一人で食ってたら虚しい。


「どうしました、王子? カレーが熱いですか?」


「ああ、いや。チチェロ。そばにいてくれて、ありがとう」


 オレがお礼をいうと、チチェロが爆発しそうなくらい赤面した。


「お、王子、急にそんな」


「感謝しているぞ。今度はおそろいのエプロンでも付けて、一緒に作ろうNA❤」


「う、おええええええ!」


 チチェロが口を抑えながら、茂みに隠れてしまった。



 二、三日歩いて、最初の村が見えてきた。

 そろそろ、コメの補給をせねば。

 おいしいコメだったらいいな。


「む、敵襲だ!」


 おびただしい数のゴブリンが、村に襲いかからんとしていた。


「弓兵、魔術兵、前へ!」


 クッコ姫の指示で、弓を持った騎士たちが、矢をつがえる。

 ローブを着た兵隊が、魔法の杖を掲げた。


 フゥヤのスケルトンたちも、同様の行為をする。

 

「放て!」


 無数の矢が雨となり、ゴブリンたちを貫く。


「敵の隊列が乱れた! 残党を、接近戦に持ち込む! 一匹たりとも、村へ入れるな!」


 クッコ姫を先頭にして、剣を持った騎士たちが突撃していった。


 オレは村の中に入って、村人たちに避難を促す。


「一匹、そっちへ向かったぞ!」


 倒しそこねたゴブリンが、村に入ってしまった。


「グギャギャー! コメもオンナもいただくギャー!」


 不快な顔を歪めさせながら、女性たちが逃げた小屋を覗き込む」


「待ちたまえ」


 オレは、ゴブリンの肩に手をかける。


「うるせえギャ。オトコは引っ込んでろギャー」


「つれないねえ。レディには、優しくしてやるもんだZE」


「そうギャ。優しく食ってやるギャ!」


「それはイカンね。乙女の身体はデリケートなんだ。むやみに口にするもんじゃないんだZE」


「グゲロ!」


 ゴブリンが、吐き出す。


 そのスキに、オレはサーベルに付与したファイアボールを、ゴブリンにプレゼント❤


「ゲギャー!」


 ゴブリンは、消滅した。


 消し炭を払って、小屋の様子をうかがう。


「もう大丈夫だZE。でも外は危ないから、まだ出てきちゃダメだぞ☆」


 村人の女性陣が、トイレや流しに駆け込んでいった。子供も老婆も等しく、リバースしに向かう。


 まあ、無事だから安心だな。


 ひとまず、オレは姫や騎士たちが仕留め残ったゴブリンを打ち倒す。


 幸い、まったく村に被害は出ていないようだ。


 そのまま、オレたちは村に滞在させてもらう。


「ありがとうございますじゃ」


 村長が代表して、オレに礼を言ってきた。

 

「この村は安泰なんですが、交流のある村は魔王の手先によって壊滅させられそうなのです」

 

 ふむ。次の目的地が決まったZO☆

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