推しと寝てから言え!

@ykib3827

第1話拝啓 推しと寝ました

「うわああああ!!」

 スマホに移るお知らせ画面にはソシャゲの次回イベントのバーナーが張られていた。そこには私の愛を超え、嫁を超し、神へとなった百合美様の限定衣装が公開されている。それだけならいい、神、ありがとう運営。でも…

「隣のその女誰?私知らないよ!!」

 黒く艶やかで妖艶な色気を放つ髪、見た目とはアンバランスで丸くかわいい輪郭。整えられた細い眉、私を見つめてくれる紫色の凛とした瞳、何度も画面越しにキしてしまった吸い込まれるような唇。の、隣はいかにもなギャル。は?そんなやつ百合美様に釣り合うわけないじゃん?運営のゴミ、カス、理解度ゼロ。まあ、イベント走るし百合美様完凸させるけど…。

「なに、あんたまたそのゲームやってるの?」

サークル棟の扉を開けて部屋にいかにもバンドしてますって顔とからだしてる幼馴染が入ってきた。

「だってぇぇ…運営が解釈違いで…」

「解釈なんて人によって違うでしょ。」

「だからってこんなわけわからん奴に百合美様の隣が務まるわけないじゃん!」

「わけわからんって…それこの前生放送で発表された下級生じゃん。あんた昨日まで下級生可愛いって言ってたのに」

「しらないしらないそんなのしらない」

「あ~はいはい、そだねー」

 私の話半分に返事する小春。こいつたった2人しかいないゲーム研究サークルの部員だってのにこのゲームやってないし、好きなゲームも特にないってなんで入ったんだよまったく。

 小春は背が高くて黒髪にメッシュしてて、高校までボーカルしてて、目つきの悪い家が隣の幼馴染。見た目がいいから女子にもてるから女子大いやって言って私の志望校受けたり、そのくせ友達いないへんなやつ。てか、なんでやってないゲームのキャラ覚えてんの?やっぱりへんなやつ。

「まあ、運営の解釈違いなんて今に始まったことじゃないし、いつも通り走りますかふぉぉぉぉぉぉ!??????」

「うおっ!おまえまた…」

「あ…ああ…あ…」

イベント報酬でもらえるカードは百合美様にお姫様だっこされてるギャルだったそれだけだったらまだよかった!だ、だってこれって…

「あー…これは…やばいな。」

とろけた2人の口から輝く逆光アーチ…橋が架かってる。レインボーブリッジかな…あはは…

 もう…どうでもいいや…私の神…あなたも女だったのですね…いきなりこんなのってないよ…あんまりだよ…。腕の傷かかゆい。視界もぼやけてきちゃった。

「とりあえず魔法のカード買って、ご祝儀あげなきゃね…」

「おい」

「どうしたの?私いまからコンビニに…」

「また解釈違いって、運営に愚痴らないのか?」

「…百合美様がこんなに幸せそうな顔してるんだよ?推しが喜んでる顔が一番じゃん。私にはできなかったことだし…。だからとりあえず3万円いれて、足りなかったら5万…。知ってる?こういうのは割り切れない数入れるのがマナーらしいよ。」

「はあ…。とりあえずその手止めろよ」

小春がつかんだ手は剥がれた瘡蓋と皮膚をはいで赤く染まっていた。半年たっても消えない切り傷からは滲むように血が流れていた。痛くはない。でも熱い。小春が心配そうにこっち見てる。

「気づかなかった…ありがとね。このままコンビニ行ってたら店員さんに怖がられてたよあはは。」

「…そうだな。」

いつものように止血消毒してっと…よし!

「じゃ、行ってくるね。先に帰ってたら洗濯物よろしく!」

「…。」




~数時間後~




「よし、とりあえず報酬は取り切った。ランキングは…16位か。今回のイベントボーダー高そうだなぁ…」

コンビニから帰るなりイベントを周回してはや5時間。小春は帰ってきてないし、イベントも10位代。はぁ…。なんだか調子でないなぁ…。

「メール来てないし、どこ行ってるんだろ。イベント中はご飯よろしくって言ってたじゃん。」

夕食時になっても帰ってこないなんてバイトしてるんじゃないかと考えるが予定表に書いてないし、小春が書き忘れなんてするわけないし…。上との差結構あるし探しに行こうかな。なんか今回、調子悪いし。ガチャ…あ、帰ってきた。おかえ…

「横山千秋」

時が止まる。今の声は手に持った端末からではない。玄関、いや、目の前にいる百合美様からの声。

「あなたが解釈違いって言うのならどれが正しいのか教えてくださる?」

黒く艶やかで妖艶な色気を放つ髪、見た目とはアンバランスで丸くかわいい輪郭。整えられた細い眉、私を見つめてくれる紫色の凛とした瞳、何度も画面越しにキしてしまった吸い込まれるような唇。それが今実際に、目の前に…

「私のカラダに…」

優しい匂いと柔らかい唇が現実だと教えてくれる。耳から入る心地い音、快楽をくれる指、そして…百合美様の美しいからだ。全部を上書きしてくれるような激しさは私を気遣ったような優しさにあふれていて、下のベッドと同じ匂いがした。

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