穢れなき世界に生まれた私は(執筆中止中)

優月アリア

第1話 私は水の神

 私は、今日も、明日も、これからもずっと、至高神様や天界に住む者達と共に世界を管理していくんだと思ってた。これから先、私が人間の持つ感情を学ぶことはないんだと思ってた。…ましてや、世界に住む生物と、話し、触れ合うことだって無いとも思ってた。でも私は今、を感じている。

神のくせに。穢れを嫌ってる種族のくせに。

…私をこんなに変えてくれたきっかけは、もう話せない神だった。

…もう話せないと思ってた、神だった。

 ――――――――――――――――――――――

 世界のバランスを観察し、少しでも乱れが見つかれば調節する。私は、水神として、至高神様の右腕として、日々至高神様の世界を管理している。最近の悩みといえば、人間が自然を汚染しているということだろうか。約100年後、もう海の生き物の数よりゴミの数のほうが多くなってしまうだろう。しかし、たったの100年。この時間の中で、他半数の人間がゴミを捨てなくなったり、ゴミをエコ的に処理するのは、不可能に近い。…だから、私達神は世界にわざと異変を見えるようにおこして警告をしたのに。人間は、欲にまみれた生き物だ。そして、この欲の根源となるものは穢れ。人間で言う感情だ。至高神様は、この穢れが大嫌いで、極力穢れを持つものに触れようとはしない。至高神様でなくても、神はわざわざ穢れに触れようとはしないが。 …こんな無駄なことを考えている暇もなく、今日も役目を全うする。

『力の乱れが見られる。中界にて解決せよ。』

またか。穢れを持ってるものはよく争うから困る。そんなことをしている間に、何個の役目が終わるか考えたことはないのだろうか。まあそんな事を考えている時間も無駄だ。私は、三層に分かれている天界の中界に瞬間移動テレポートした。

 ここは、いつ来ても変わらない。きゃっきゃと騒ぐ声が聞こえて、色鮮やかな建物が並んでいる。力の乱れが見られるのは…あそこか。結構中界の中央広場の目印である、噴水に近い場所だ。そこに向かうと、案の定喧嘩している妖精達がいた。妖精は大体、至高神様の世界で過ごすが、妖精は四季で役目や持つ力が変わるので、春の妖精を例にすると、夏や秋、冬になった時には天界に帰ってくる、というようなものだ。まあこれも大抵という話であり、個人差くらいはある上に私は妖精では無いから、細かくは覚えていないが。まずすべきは、この争いの解決だろう。私は、現場に近づき、こう言い放った。

『力を乱すな。バランスも乱れてしまう。』

妖精たちは、私の存在に気がつくと、皆凍りついたかのように争うことをやめ、私に視線を合わせた。そんなになるほどのことを私がしたのかも知れないが、そんなとこはどうでもいい。取り敢えず、争いを止めることは出来たのだ。後は、妖精の力が変に溢れ出した原因を視なければ。

「あ、あの…」

声なんて、久方ぶりに聞く。数えてみると、5人ほどいる妖精の中から1人、私に寄ってきた。その手には、恐らく人間が作ったであろうネックレスが握られている。私は、妖精が何を言うのか分からなかったが、他の生物がよくやっている行動を思い出して、この妖精に目を合わせた。

「すみませんでした・・・・っ!これ、人間さんにもらったネックレスで…。、貸すとかすればよかったのに、奪い合いになったら、その拍子に壊れちゃって…―――。」

妖精は、話していると涙を流し始めてしまった。そんな様子に気がついたのか、後ろにいた妖精たちもこっちに来て、慰め、みんなで謝り始めた。…なんで、こんなに謝るのが好きなのだろうか。妖精たちは喧嘩をしていたから、なんとなく謝る理由はわかるが…。まあそんなことはどうでもいい。私は、妖精の手に握られたネックレスを、完璧に直し、残りの妖精たちにも先端の華の飾りを変えたネックレスを作ってあげた。妖精たちは、急に直ったり現れたりしたネックレスを見て、目を見開いていた。

「あれ…?私のネックレス、直ってる…?ひぐっ…」

「えっ!?私達にもひーちゃんと似てるネックレスが出てきた!」

さっきまであんなに静かなムードだったのに、ネックレスを上げただけでこんなにも楽しそうに話している。穢れを持つもののことは、本当によくわからない。とりあえず、ここでの用事はすんだ。私は帰ろうと、後ろに振り返った。

「あっ…の!」

 次は何を言うつもりだろう。本当、穢れを持つものは話すのが好きだ。

「…みんな、いい?」

いつの間にか泣き止んでいた妖精が、こう呼びかけると、5人の妖精はこう述べた。「「ありがとう!アリア様!」」

私は、一瞬後ろを振り返ってから、そのまま来た道を戻っていった。帰ろうと思ったが念の為、他に力の乱れがないか見回ろうと思ったのだ。ちょっとした異変であっても、見逃してしまえばそれはおおきな被害になりうる。それを防ぐためにも、できるときに見回りをしておいたほうが効率的と言えるだろう。

…少し回ってみたが、特に異変もなにもなさそうだ。乱れの種になりそうなものもなかったし、私は今度こそ瞬間移動テレポートをしようとした。しかし、その時、知らない気配をしたやつから、話しかけられた。…いや、違う。神だ。私が会ったことのない。私は神を、皆把握している。気配もすべて覚えているはずなのに、どうしてだ。しかも、なんで私は神に…の?

「おいおい、帰っちゃうのか?ほんと無駄がなくてご立派なもんだな。至高神の右腕様。」

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