第46話
「な、なんでアクティス第一王子がエリッサの所に…!?」
エリッサの元を訪れるべく、部下を率いて馬で駆けていたノーティス第二王子一行。
王宮を出てしばらく進み、いよいよエリッサの住む家が見て取れるほどの距離まで迫ったその時、なにやら家の外で話をしている二人の人物の影が目に入った。
…さらに接近し、目を細めてその二人の顔をよく見つめてみた時、そこにいたのは家の主であるエリッサと、アクティス第一王子本人であった。
「(ど、どういうことだ…!アクティス第一王子がエリッサにいったい何の用があるというんだ…!ま、まさか俺の行動を先回りして嫌がらせでもしようというつもりじゃないだろうな…!)」
事情が分からないために、ノーティスはその心の中を次第に焦りの色で染めていく。
「(な、何を話しているのかは知らんが、一秒でも早く阻止しなければ…!)」
ノーティスは大急ぎで馬の足を進め、エリッサとアクティスが話をする場所へと突き進んでいったのだった。
――――
「だ、誰か来てる…?」
エリッサの方もまた、誰かが自分たちのもとに接近する音を聞き取った。
あたり一帯にこだまする馬の駆ける音は非常に大きな音で、家の中にいたとしても聞こえてくるほどの大きさと言える。
…しかしその時、彼女はその脳裏に一つの疑問を浮かび上がらせた。
「(あれ?それならさっきアクティス様がここに近づいていた時、なんで私は気づかなかったんだろう…?これだけ大きな馬の音が聞こえてきたら、聞き逃すはずなんて絶対にないのに…)」
エリッサはアクティスの訪れを、レグルスからの知らせによって把握した。
…しかしそれ以前に、アクティスがここに向かってくる様子などは一切感じられなかった。
「(ま、まぁいいか…。たぶん私が鈍感だっただけだよね…?)」
この時はあまり深く考えないエリッサだったものの、このからくりについてもまた、後に知ることとなる。
そしてそんなことを考えている最中、いよいよ彼女にとって因縁ともいえる一人の人物はこの場に姿を現したのだった…。
――――
「ノーティス様…。突然こんなところまで何の御用ですか…?」
エリッサにとってノーティスとの再会は、あの一件以来初めての事だった。
ノーティスは自身の心の中に抱く複雑な思いを一旦すべて押し殺し、しおらしい様子でエリッサに向けてこう言葉を発する。
「その…。いきなりの訪れになってしまったことはすまない…。その、君にはまだきちんと謝罪をしていなかったと思って…。エリッサ、君とレグルスの事を一方的に利用しようとし、乱暴な手だてを繰り返してしまったこと、本当に申し訳なく思っている…」
ノーティスは悪態をつくことなく、素直にその頭を下げて謝罪して見せた。
そんな彼の姿を見て、エリッサとアクティスは順番にこう言葉をつぶやく。
「過去の事ですし、もういいですよ。こうして謝ってもらえたんですし…」
「ほー。ずいぶんと素直に謝れるじゃないか。なにかそうせざるを得ない理由でもあるのか?」
「(ギクッ!」
アクティスの言葉に対し、分かりやすくその体を反応させるノーティス。
まるですべてを見透かしているかのようなアクティスのその雰囲気に対して、ノーティスはやや歯切れの悪い口調でこう言葉を返した。
「そ、そんなことはありませんとも…。そ、それにしてもどうしてアクティス様がこちらにいらっしゃるのですか?」
「なんだ?別に私が一人でどこに行こうが勝手だろうが?」
「は、はい…」
エリッサに対してはやや穏やかな雰囲気だったアクティスが一変、ノーティスに対しては非常に
エリッサはそんな第一王子の雰囲気にややびっくりしながらも、改めてノーティスに対してこう言葉を告げた。
「あの、もうほんとに大丈夫なので。なのでもうお帰り頂いてもいいですか?これ以上話すこともないでしょう?」
「あ、いや、それが…」
エリッサにそう言われてしまったものの、ノーティスにとっての本題はこの後の話であった。
…しかしこの話の流れでレグルスの力で王宮を直してほしいと頼み込んでも、エリッサに受け入れられる可能性は低いとみたノーティスは、別の方法で話をつなげることとした。
「そうだ、まだ話があるのですよ。実はこちらをお預かりしておりまして…」
「…手紙?」
ノーティスは仕立てにでながらエリッサに対し、カサルより預かっていた手紙を差し出した。
「エリッサ、君のお父様からのお手紙だよ。…きっと君の事を心配しているんじゃないだろうか?」
「……」
そのようなことを言われても、そこに何が書かれているかなど、誰の目にも明らかであった。
…しかし受け取らないわけにもいかず、エリッサは渋々といった様子で手紙を受け取り、その中身を確認しようとする。
「さぁ、ぜひ読んでみて」
「……」
「(ひょいっ)」
「「あ」」
その時、隣から二人のやり取りを眺めていたアクティスが、エリッサの手から手紙をかっさらっていく。
そして彼はそのまま封を開封し、そこに書かれている内容に一人で目を通していく。
「おいおいアクティス様!いくらあなたでもそういうのはよくないでしょう!!」
大きな声で抗議の声を上げるノーティスであるが、当のエリッサは全く何とも思っていない様子で、彼女はそのままアクティスからの言葉を待っていた。
そして手紙の内容に目を通したアクティスは、やや笑みを浮かべながらこう言葉を発した。
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