第8話

「弟さんと妹さんだったんですね。小学生ですか?」

「はい、二人とも小学二年生です。悠貴、愛花、このお姉さんは御供早穂さん、少し前にケーキと紅茶を持って帰ってきた時があっただろ? それをどうぞってくれたお姉さんだ」

「そうなんだ! ケーキ、とーっても美味しかったです!」

「今まで食べたケーキの中で一番美味しかったです!」

「「本当にありがとうございます!」」



 悠貴と愛花が双子らしいユニゾンで元気よくお礼を言うと、御供さんは二人を見ながら優しい笑みを浮かべた。



「どういたしまして。こんなに元気な子達ばかりだと毎日が楽しそうですね」

「相手をするのは本当に大変ですけどね。二人ともいたずらっ子ですし、朝起きたら二人とも隣で寝ていた時もあります」

「愛花と一緒に寝るのも良いけど、にーちゃんと一緒の方があったかいから!」

「夏はあっついけど、気持ちはぽっかぽかだよ!」

「はいはい。そう言ってくれてにーちゃんは嬉しいよ」



 二人の頭を撫でながら言っていると、家のドアが開き、中から母さんが出てきた。



「あら、歩。そちらはもしかして……」

「うん、御供さんだよ。御供さん、ウチの母です」

「初めまして、お母様。御供早穂と申します。共田さんにはお世話になっています」



 御供さんが綺麗にお辞儀をしながら言うと、母さんは笑ってからお辞儀を返した。



「こちらこそウチの息子がお世話になっています。それにしても、誰かと一緒に何かをやるのが苦手な歩がこんなに綺麗な子と一緒に部活動をするなんて思わなかったわ。歩、わかってるとは思うけど、早穂さんには無理をさせないようにね?」

「わかってるよ。そういえば、これから公園に遊びに行くんだっけ? 僕達もこれから公園に行くところだったんだ」

「にーちゃん達も公園で遊ぶの!?」

「いや、30分くらい歩くからその通り道にしてるだけだよ。ウチを経由して公園を通って御供さんの家に戻ればだいたい30分くらいだから」

「そっかぁー……」

「遊ばないのかぁー……」



 二人はガッカリした様子で項垂れる。それを見て少し可哀相かなと思ったけれど、30分程度で戻る予定にしていたし、御供さんが疲れてしまうとよくないと思ったので仕方ないと感じていた。


 けれど、御供さんは悠貴と愛花を見てから優しい笑みを浮かべ、そのまま僕に視線を移した。



「共田さん、公園で少し遊ぶくらいは良いと思いますよ」

「え?」

「ほんと!?」

「早穂おねーちゃん、遊んでくれるの!?」

「はい。私はそんなに長くは遊べませんが、公園内を一緒に歩いたりお話をしたりするくらいなら問題ありませんよ。こうして悠貴君と愛花ちゃんにお会い出来たわけですしね」



 御供さんの言葉に悠貴と愛花が嬉しそうな顔をしていると、母さんは申し訳なさそうに御供さんに話しかけた。



「早穂さん、ごめんなさいね」

「いえ、私は一人っ子で小さな子とふれ合う機会は中々無かったのでこれも良い経験になります。共田さん、良いですよね?」

「はい。けど、少し遅くなるわけですし、吉良さんには連絡しておいた方が良さそうですね」

「ええ、それは私の方からしておきます。こういう事情なら芽衣子も許してくれると思いますから」



 御供さんが笑いながら言った後、僕は悠貴と愛花に話しかけた。



「二人とも、御供さんにありがとうは?」

「早穂おねーちゃん、ありがとー!」

「ありがとー、早穂おねーちゃん!」

「どういたしまして。では、そろそろ行きましょうか」



 僕達は頷いた後、御供さんと一緒に公園に向けて歩き始めた。

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