俺は異世界で愛を知る

にゃん

第1話 

「はぁ、今日も帰れそうにないな。」

23:50分を表す時計を見ながら呟いた。

俺の名前は松岡雄介(マツオカユウスケ)。ブラック企業に勤めて10年目になる33歳。そして34歳の誕生日を会社で迎えようとしていた。カチカチとなる時計の音に少し苛立ちながらもパソコンを叩く。どんだけパソコンを叩いても終わらない仕事。会社に残っているのは自分1人。いつも自分ばかりに仕事を押し付けてくる上司や同僚達は帰っている。断れない自分の性格を呪いながら作業を進める。

やっとひと段落着いたところでコーヒーに口をつける。

「冷たっ、」

買った時は温かかったコーヒーも冷え切ってしまっている。冷たいコーヒーを口にしながらパソコンに目をやるとふと広告が目についた。

「とびきり愛してあげる。」

胡散臭そうな広告だ。たぶん乙女ゲームの広告だろう。それを見ながら自分の人生を振り返ってしまった。なんとも愛のない人生。普段ならきっと考えない。時計を見たら24:00を超えていた。34歳をこんな形で迎えるとは。疲れが溜まっているのだろう。今日はもう寝てしまおう。

「愛されたかったなぁ、」

と呟きながら眠りについたのだ。

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