episode.5 人生初、バズり


「まじか〜!」


 寝入ってしまっていたトオルは自然と充電されていたスマホを手に思わず大声を上げた。


 彼が寝入って6時間。Wow Tubeの登録者数は30万人を超え、Zのフォロワーも100人から5万人に増加。スマホ配信サイトのフォローも1万人に増えている。

 

「これは、緊急で配信をつけなくては⁈」


 スマホの配信サイト「リスナーラブ」略してリスラブを起動する。起動してワンタップで雑談配信枠を開始する。後追いでミュートにしつつPCも起動する。これで配信画面が問題ないか確認するのだ。

 それと同時に連携しているZにもつぶやき投稿がされるので……普段ならこんな変な時間(平日昼間12時)に来てくれるのはLove沼さんくらいだが……。


「やっぱり! みなさん、こんちは。Truです」


【リスナー 500人】


(この底辺アプリでは考えられない視聴者数⁉︎)


<おっ、来た>

<動画見ました! 初見です!>


「おぉ、初見さんこんにちは」


<すげ〜クオリティのWow Tubeでしたね! 次の食べ歩き系動画も楽しみです!>

<異世界の食べ物どうやって作ったんですか?>

<人魚の涙? あれのクオリティえぐいわ>


「みなさん、あざーす。次の動画もまぁ近日中に……」


 やはり、異世界での動画は【ハイクオリティなフィクション】として受け入れられているようだった。トオルとしては動画がバズれば正直どうでもよかったし、仮に本当に異世界に行っていることを皆に理解してもらったとしても、どこかの研究所なんかに連れて行かれて調べられりするのはごめんだったので逆に都合が良かった。


<Truくん。人気者になって本当によかった。これからも応援させてね!>


「あ、Love沼さん! いつもありがとう!」


 古参には挨拶を欠かさないトオル。Love沼さんからはすぐに投げ銭2000円が入る。


「あ、投げ銭ありがとうございます!」


<お、初見です! 応援代金です! 1000円>

<投げとくか 500円>


「おお、皆さんありがとうございます!」


<異世界だけじゃなく、こっちの世界の食べ歩きとかしてほしいです! うちの地元は餅料理が有名で〜>

<ぼっち食べ歩き希望! カップルいっぱいいる系のところに行ってくれ!>

<これがトレンド入りの新しいWow Tuberですか〜、大物になる予感>


「トレンド?」


<Zのトレンド、昨日からTruくんだぞw>

<気がついてないの草>

<ってか、これ見てみなよ>


 とコメント欄に貼り付けられたURLをトオルはPCからクリックしてみた。それは結構有名なネットニュースサイトだ。


「俺の記事……?」


【新生Wow Tuberあらわる! 映画並みにハイクオリティな異世界描写と飯テロで一躍大バズり!】


 という題名とともにTruチャンネルについて記されていた。その記事の公開はつい数時間前、そこには夜中にZのトレンド1位になっていた旨も書かれている。


「俺、すっかり寝てる間にトレンド入ってたの⁈ まじかよ〜、スクショとってねぇよぉ」


<草>

<Truくん、スヤスヤだったのかよw>

<これはいいリアクション>

<スクショ送りましょうか?>

<まぁ、まだ一応10位にいるぞ>

<これは人気でるなぁ、人柄がおもろいもんコイツ>

<完全にいじられキャラだな>

<いいね、動画クリエイターっぽいわ。でも編集時間かかるだろうし気長に待つからたまに作業配信とかしてほしいなぁ>


(そうか、あれめっちゃ編集に時間かかってるように見えるんだな)


 実質、トオルが編集にかけた時間は文字入れと適時カットで1晩だ。スマホでやったので時間がかかったがPCであればそこまで時間はかからなかった。

 

「じゃあ、そろそろ動画編集しなきゃなので……このへんで!」


 配信を切ってもトオルの心臓は高鳴ったままだ。自分のチャンネルが急上昇ランキング入り、その上Zでもトレンド入り。配信をつければ投げ銭が数万円分飛んでくる世界線になってしまったのだ。


「よっしゃ、とりま換金できそうなアクセ仕入れて次の撮影にいくべ!」


 押し入れには相変わらずワープ空間、収益が入るまでは2ヶ月。トオルのやることはただ一つである。


「撮影しまっか〜!」


——ピンポン


 来客の予定はないはずが、玄関チャイムがなった。宗教の勧誘か、それとも配信で騒ぎすぎたか? とトオルは不安になりつつドアスコープを除いた。


「——⁈」


 トオルの家の前には、可愛らしい女性が立っていた。


「恋沼……さん?」


 彼女は、先日ウーバールでトオルの部屋に届けてくれた美人配達員さんだ。しかし、トオルはウーバールを頼んでいないし、部屋の前に立っている彼女は配達していた時の格好ではない。

 まるで、デートにでも行くような格好だ。


「あ、あの! 串野さん。お話があって」


 トオルは鼻の下を伸ばさないように表情を作り直してドアを開けた。



***あとがき***


お読みくださりありがとうございます!


次回、掲示板回・side???回を挟んで次章、ヒロイン登場編です!お楽しみに〜



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