ずっと目で追ってた人
メガゴールド
第1話 何故か目で追っていた
おどおどしてるから? 人に意見もできないから? 彼女はそう思っていた。
幸い……と言っていいかは微妙だが、暴力までは今のところ受けてなかった。
言葉の暴力が基本。寄ってたかって毎日のように悪口を言われていた。
だが、それが理由なのか、教師達にはいじめられてる事が知られてなかった。
暴力を受けてるわけじゃないから、目に見える傷もないし、一目でいじめと気づかれないからだ。
でも、心の傷は深い。暴力をふるわれないから大丈夫、なんて事はないのだ。
和花は学園に通うのが苦痛だった。
でも、そんな和花にも庇ってくれる友人がいた。
へたりこむ和花を囲み、彼女のカバンを踏みつけ誹謗中傷、罵詈雑言の数々をぶつける数人の男子。そんな中に割り込む男が一人。
「おいなにやってんだ!」
「おー怖! 彼氏が怒ってるじゃんか。行こうぜみんな」
怒鳴られたらあっさり離れるいじめッこ達。ニヤニヤしてるしビビってるわけではないのだろうが……なんか不穏だった。
割り込んだ男子は、踏みつけられていた和花のカバンをはたいて渡す。
「大丈夫かよ和花」
「……あり、がと。茶谷」
茶谷は和花の幼なじみで友達。
容姿は平凡だが、体つきはよく、背も高い。喧嘩も強いと噂。
ただ髪は染めてるし、サボりの常習犯で根っからのヤンキー体質。
和花は付き合い長い割には茶谷の事が苦手だった。怖いし。
というか元々友達の友達という関係で、そもそもそんなに仲いいわけではなかった。
でも、助けてくれるから無下にはできないのだが。
「なあ、和花。この前言った事、考えてくれたか?」
茶谷の言葉にビクッとする。
「む、無理だから……」
和花は軽く頭を下げて、逃げるように去っていく。
茶谷は声かけたように聞こえたが無視して。
……和花は男子が苦手になっていた。付き合い長い茶谷すら怖いほど。
……そんな彼女だったのだが、
「あ、……闇野くん」
逃げた先の図書室。そこに先客が一人いた。
彼の名は
青髪でさらさらのロングヘアー。背は和花よりも小さい。
容姿はまだあどけなさはあるものの、アイドル顔負け、絶世の美少年と言って差し支えない男子だった。
男子が苦手な和花だったが、何故か青春の事はよく目で追ってしまっていた。
その美しい容姿のせい?
もちろんそれもあるのだろうが、一番大きいのは怖さがなかったからだった。
自分と同じくおとなしめ、というか無口な少年。粗暴さや暴力性は皆無。そしてどことなく優しい雰囲気が彼にはにじみ出ているように和花は感じていたからだ。
話した事など一度もないのに……外見だけでなく、内面にすら和花は惹かれていた。
ただ、当人にその自覚はなかった。
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