チー投資~前世の知識でお金持ち目指したらモフモフに囲まれて幸せになりました~
真心 糸
第1章 うさ耳と不動産投資
第1話 プロローグ
「フラン・ペソ様、こちら、今回の土地取引による売却額1億5000万マーニになります。どうぞお確かめください」
銀行員の男性が、お盆をテーブルの上に置く。そこには、宝石のように輝く硬貨が1枚ずつケースに収められて並べられていた。
「はい、ありがとうございます。アウルムちゃん、確認をお願い」
「はい、フランお姉さん!了解なのです!」
わたしの隣に座っていたピンク髪の幼女が硬貨を1枚1枚確認し始めた。緊張しているのか、頭のうさ耳がピクピクと動いてる。
わたしは、可愛いうさ耳を眺めながら、取引内容について振り返っていた。
まさか、こんなに上手くお金儲けが成功するなんて……
わたしは今、異世界の銀行にて土地売買の取引を行っているところだ。
数ヶ月前に二束三文で購入した土地を、数100倍の金額で売却ようとしてるところなのだ。
ここまで来るのに、本当に長かった。
だけど、前世で銀行員として投資まわりの仕事に就いていたおかげで、その知識をもとに大金を手にすることができたのだ。
それに、あのチートスキル……
お金を稼ぐには最適過ぎるそれを手に入れたわたしは、こうして莫大な資産を築くことができた。
今からこのお金を使って豪遊することを考えるとワクワクが止まらない。
普通のサラリーマンだったわたしにも!ついに春がきたわ!
まずは手始めに高級ディナーを……じゅる……
いや、それよりもリゾート地に別荘でも買って悠々自適にのんびり過ごすのもいいかもしれないわ。
憧れのスローライフ、うさ耳もふもふ幼女付き、うーん、それもいいわね……
「フランお姉さん!たしかに150枚あるのです!」
「ありがとうね」
おっといけない、よだれを垂らしそうにしていた思考を切り替えて、取引を進めることにする。
「それじゃあ!問題なければ、土地所有者のフランちゃんの署名で取引完了だからよ!サインよろしく!」
不動産の仲介業者から、魔法陣が描かれた契約書を渡された。
すでに土地を購入する商人のサインは書かれていて、わたしの正面でニコニコしている。
「……」
商人さんは、かなりの大金を出したにも関わらず、機嫌が良さそうだ。
それはそうだろう。橋ひとつ渡った土地と比べれば、わたしが提示した金額でも安い方だからだろう。
この取引は別に詐欺じゃない。
土地の価値をわたしの工夫で向上させたから成立した取引なのだ。
あとは、わたし自身が大金を手に入れる覚悟があれば、取引は成立する。そう思うが、なかなか筆が進まない。
「フラン殿?どうかされましたか?やはり、この価格では不足だったでしょうか?当商会としては、まだ資金の用意がございますので、もし不服ということであれば……」
「あ、いえいえ!すみません!大丈夫です。こういった取引に慣れてなくてですね。緊張していただけです」
「そ、そうですか?」
「ええ……」
わたしはニコッと笑いかけたあと、契約書にサインを書く。
フラン・ペソ。
変な名前、前世の名前が懐かしいけど、神様に決められちゃった名前だから付き合っていかなきゃならない。
まぁいいっか、フランの方は可愛いし。
サインを書き終わると、魔法陣がスゥっと優しく光り、元に戻る。
「ありがとうな!これで!取引は完了だ!フランちゃんの取引に関われて良かった!それに旦那も!ありがとうございました!」
不動産業者がお礼を言って立ち上がったので、わたしと、商人さんも立ち上がる。
「フラン殿、この度は素晴らしいお取引、ありがとうございました」
手を差し出されるので握手を返す。
「こちらこそ、あの場所にお店ができるのが楽しみです」
「お任せください。当商会の自慢の店舗を建てるとお約束しましょう」
わたしは、ニッコリ笑顔を返して手を離す。
「アウルムちゃん、金貨の収納をお願いね」
「はいなのです!」
アウルムちゃんが何もない空間から宝箱のようなものを召喚し、その中に硬貨を収納する確認する。うさ耳幼女が一生懸命手を動かすのを見てから、わたしたちは会議室を後にした。
銀行の外に出る。目の前は大通りで、港町の港のすぐそばだった。
綺麗な青い海に浮かぶ大きな船、その船から荷物をおろす人たちが見える。でも、その人たちは、普通の人間とは異なっていた。頭に角や耳を生やしている人、身体がすごく大きかったり、小さかったり、多種多様な人たちがいる。
それだけでここが異世界だってことがハッキリわかる。
「ふぅー……緊張したのです……フランお姉さんはすごいのです。全然緊張してないように見えたのです」
隣にいる愛すべきわたしの天使がピクピクとうさ耳を動かしながら話しかけてくる。
わたしのお腹くらいの身長のその子は、こっちの世界に来てからすごく懐いてくれた女の子だ。
こっちに来てからすぐに出会って、ずっと仲良くしてくれている。もふもふで素直でとっても可愛い。
このアウルムちゃんの協力もあって、さっきのとんでもない取引が成功したんだ。そう思うと、無償にお礼をしたくなってきた。あとで、お礼にモフモフしてあげようと思う。いや?これだとわたしにとってのご褒美ね……
「ふふ、そんなことないわよ。わたしだってすごく緊張してた。それよりも、せっかく大金が手に入ったんだし……じゅるり……」
「フランお姉さん……まさか……」
「最高級肉料理!シードラゴンのステーキを食べにいきましょう!」
「はわわわ……そんな豪華なものを……ごきゅり……」
「もちろんアウルムちゃんにも奢るわ!」
「そんな!ダメなのです!そんな贅沢!」
「うふふ!ならそのよだれはなぁに?」
「はわっ!?」
アウルムちゃんが恥ずかしそうによだれをふく。
「さぁ!遠慮してないでいきましょ!」
「あ!待ってなのです!フランお姉さーん!」
わたしは、アウルムちゃんが追いかけてくるのを確認しながら、これまでの取引のことを思い出し始めた。
あぁ……長い長い、半年間だったなぁ……
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