落ちこぼれOLと堕天使の媚薬。

猫野 尻尾

第1話:堕天使。

お試し投稿。

今回は男女の恋愛から離れてみました。



堕天使とは、高慢や嫉妬のために神に反逆し、戦いに敗れて天界を

追放され地獄に落とされた天使のことを言う。


堕天使の中には男性の天使と女性の天使がいて神に逆らったせいで

地獄へと落とされた女性の天使もいる。


女の天使シモンは神に逆らうつもりはなかった。

ただ神と他の天使との諍いに巻き込まれて地獄に落ちただけ・・・。

不本意なことだった。

一度落ちたら二度と這い上がることも抜け出すこともできない地獄。

もはや天界に戻る希望はなくなった。


だが、神様は人間のために奉仕するつもりのある天使には恩恵を与えた。

つまり地獄から救い出す代わりに人間界で生活し落ちこぼれの人間を

ひとり一人前に育て上げることで、神に逆らった過ちは免罪してあげよう

って神様のありがたい思し召し。


で、堕天使のシモンも迷わず立候補した。

このまま地獄にいて悪魔に変貌したままより人間界に行く方がまだましだと思った。


シモンは人間の男子の面倒を見るのがイヤだったので女子を選ぶことにした。


で、落ちこぼれ候補に上がったのが「吉崎 凛音よしざき りんね

23歳、某外資系商社に勤務するOL。


凛音りんねは落ちこぼれ・・・以前、恋人にフラれてから、それを

引きずるようにツキが落ちて何をしてもうまくいかなくなった。


で、毎日のように神様に願っていた。


どうか仕事でドジ踏みませんように、忘れ物しませんように素敵な相手が

見つかりますように・・・。

神頼みは自分が安心したいがために祈っているだけだった。


でも、その願いは神様に届いて、そしてシモンが彼女のアパートにやって

来ることになった。

普通に玄関ドアのチャイムを鳴らして・・・。


夕飯の支度をしていた凛音りんね、チャイムが鳴ったので玄関まで

行って用心のためドアスコープを覗いた。

そしたら玄関の外に黒髪にメガネをかけた一人の女性が立っていた。

怪しい人でもなさそうと思った凛音はドアを開けた。


「こんにちは?・・・こちら吉崎 凛音よしざき りんねさんのお宅?」


その女性はそう言った。

凛音は見た目その女性が自分より年上な気がした。


「そうですけど・・・なにか?」


「ここではなんですから、上がらせてもらっても?」


「あの、どのようなご用件でしょう?」


「そうですね・・・何からお話すればいいかしら・・・」

「それにしても、ここではやはり複雑な内容なので、できれば落ち着いて

お話がしたいのですが・・・」


「そうですか?」


相手は女性だし、特になにかの勧誘でみなさそうなので凛音はその女性を

リビングに通した。


「自己紹介しますね・・・私、堕天使のシモンって言います」


「堕天使?・・・今、堕天使って言いました?」


「そうですよ」


「堕天使って?のは・・・天使じゃないんですか?」

「とくにそこは気になさらずに・・・以前は天使には違いないんですから」

「今はちょっとだけ悪魔が入ってますけどね」


「信じられないんですけど・・・」


「それは想定内のこと・・・でも現実です、受け入れてください」


「その・・・堕天使さん?が、私になんのご用でしょう?」


「凛音さん・・・あなた毎日、神様にお祈りしてるでしょ?」


「あ、はい・・・苦しい時の神頼みです」


「あなたの願いは受理されたんです」


「へ?」


「神様があなたの願いを聞き入れてくださったの」

「だから私があなたのところに派遣されてきました」


「派遣って?・・・なんのために?」


「凛音さんを落ちこぼれ人生から一人前のキャリアウーマンに育てあげる

ためです」


「うそ・・・」


「ってことで、あなたの面倒を見るために、今日から私は凛音さんと

一緒に暮らしますから・・・よろしくね、凛音りんねさん」


「はあ・・・」


返事はしたものの、いまいち受け入れていいのか迷う凛音だった。


シモンは凛音を見てまあ多少ドジでも、この子ならビジュアルは合格。

自分の相手としてはそこが一番大事と思った。

シモンはブスは嫌いなのだ。


つづく。

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