第1話 気付き

小さい時は特に社交性がない。

どちらかというと内向的。

小学生になっても人との関わりがあまり持てない幼少期。

兄弟格差も感じ、いつからか心では家族に溶け込めなくなっていた。

それがタカヒロ。


小学3年生から喘息になり、自覚する以上に虚弱体質。

学校の記念旅行はほとんどアルバムの右上の丸写真の中。

授業中は体調が悪いと言っては保健室へ。

嘘をついてクラスから離れる事もしばしば。

とにかく人とコミュニケーションを取るのが好きではなかった。

当時の人に聞けば、間違いなく”存在感の無い真面目な奴”だったと思う。


すでに10歳位の時には家族旅行に行くという話が出た時、どうしても一緒に行きたくなくて仮病を使い一人家で留守番をした事もある。

でもそれが自分にとってはとても楽だった。

すでにその年齢で、一人で過ごす時間が楽しく思える。

母親が昔の写真を見てはたまにこんな事を言う。


(なんでこの旅行の写真にタカヒロが写っていないんだろ?)

・・・行ってない事も忘れられているから凄い存在感の無さだ。


今、振り返ると自分の周りにそんな子供を見た事が無い。

皆、子供は親と共に行動をするのが当たり前。

だから僕は特別「変人」だったんだと思う。

世の中のその当たり前がとても苦手だった。


中学生になると、より一層、一人でいたいと思うようになるが、体を強くしたいという思いから運動部に入る事に。とにかく喘息を克服したかったのだ。

たまたま知っている先輩がバスケ部にいた事からバスケ部に入部する事になる。

こんな先輩の様に人から憧れられるような存在に俺はなれないだろうな?

と思いつつも、少しは自分が変わるのを期待していたのかもしれない。


しかし、残念ながら入部したのは良いが、あまりにもきつ過ぎるバスケ部。

どうやらその中学でも1、2を争うほどの厳しさだったらしい。

日を追う毎に新入部員は辞めていき、30人以上いた部員は1か月で10人程になってしまった。

辞めたいほどきつかったが、その「辞める」と伝える度胸がなさ過ぎてずっと部活に出る事に。

その結果、持病の喘息も少しだけ良くなっていき、体も不健康から普通の体になりつつあった。そして最終的にはバスケ部内では「副キャプテン」にまでなってしまう。人生は本当に分からないものだ。

あの性格の暗かった小学生が、性格が暗いまま副キャプテンにまでなるとは思ってもみなかった。

更に体の変化が。成長期というのは想像を超えていた。

中学入学当初は158センチだった身長も中学3年で182センチまで伸びる。

年々、体格も変わっていく事に自分でも驚きを隠せなかった。

身長順で並ばされていた立ち位置も、最終的には真ん中だった自分が、一番後ろになってしまった。


今でも覚えているが、当時見ていた夢は、ほとんどが同じような内容だった。

(お前デカすぎるんだよ!ジャイアントタカヒロー!と言われながら石を投げられる。)

その為、大きくなる事が嫌になり、他人と目線を合わせる為にしていた(体を丸める)という行為のせいで、猫背になってしまった。

大きい事で、人よりも目立つのが嫌だったからだ。

中学生あるあるなのかもしれないが・・・。


そんな中学時代を過ごしていたが、俺の頭の中はいつもその先の事しか考えていなかった。早く家を出たい。自分で働いたお金で生活をしたい。

全て自分の思うように生きてみたい。

自分で稼いで生活すれば親にも文句は言われない。そう思っていた。


____そんな事ばかり考えて過ごしていた中学時代____


「家からの脱出」ではないが、何かある度に母親に対して、

「いくつになったら家を出ていいか?」と、尋ねていたものだ。

その都度、「東京に家があるのに家を出るなんてもったいない」と言われた。

でも、俺の本当の想いは・・・。

(いや、家に縛られる事の方が一番もったいない生き方だ)と。


一つ間違えば登校拒否児になりかねない当時の俺。

ギリギリの所で精神を保ち、大嫌いな中学へと毎日足を運んだ。

このままつまらない時間と共に大人になるのか?と、ものすごく不安な中学時代を過ごし続ける。正直楽しいと思う事はほとんどなかった。

きっと高校生になれば、少しは楽しくなるのかもしれない、と期待を持ちながら中学を乗り切った。

自分の中では色々あったが、戻らなくても良い暗黒の時代となったのは間違いない。

・・・嫌いな時代があってもいいじゃないか・・・。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る