第42話 家族デート①

 

今、目の前にいるのはセミカ・イべルアート

原作では姉マリアを毒殺をしたことで知られている。

ただ、このキャラを知っているのはごく一部だろう。

原作でのメインキャラは家族の中では俺とソフィアだ。マイナーキャラである姉は勿論、その人物を殺した奴のことなんて以ての外だ。


俺は元々、アクセルファンということもありこいつのことは知っているつもりだ...アクセルの家族を殺害したというレッテルがあるから今にも殺したいわけだが....


「.....姉さん、この人は?」

ここで騒ぎを起こせば潰したい奴らも潰せない。

悔しいが、身を削る思いで耐えることにして姉さんに聞く。


「....セミカっていう、よく私にちょっかいを掛ける奴よ、正直少し苦手だわ」

苦虫を潰したような顔をして言うが、それを聞いた彼女は表情を変えて


「嫌ですわマリアさん。本人の前で苦手だなんて...私、悲しいです」

およおよと、今にも涙を流しそうな表情をしながらそんなことを言う。

...表面上は、だが。


今はっきりと理解した、


読んでいた時にずっと感じていたこの忌々しい気配....奴らにそっくりだ。


「あなたが私に付きまとうからでしょ?そもそも私はあなたとは関わりたくないの。

本当に勘弁してちょうだい....」


「そんな冗談言わないでくださいマリアさん。私達の仲なのに....ですがまぁ今日の所は引きましょうか」


そう言ってセミカは俺たちに背を向けて歩き出そうとしている。


「あぁそれと...マリアさんの弟君?」

だが、最後に俺に用があるのか、顔だけこちらを向けてくる。








それだけ言って今度こそ去っていった。


......くそっ最後に嫌な気配を纏いながら変なことを言いやがって。

俺がセミカに向けて隠していた殺意を向けていると、姉さんが俺を抱きしめてきた。


「?姉さん?」

何故急に抱きしめてきたのかが分からず、困惑している間、姉さんは何かを暗唱するようにぶつぶつと呟いてる

「....大丈夫よお姉ちゃんが絶対に守ってあげるから....もうあんな悲劇に遭わせないわ.....大丈夫.....大丈夫だから」


それは普通に見れば怖がっている弟を姉さんが宥めているようにも見える。

だが、何故か俺には姉さんがなにかを怖がってるようにしか思えなかった。

もう失敗しないように、もう失わないようにと自分自身に言い聞かせてるような....


そんな疑問を抱きながらも俺はセミカの後ろ姿を見送り、その後姉さんと一緒にさっきまでいた噴水の所に行くのだった。





「……これは、どういうことですか?」


殺意ビンビン、目は真っ黒に濁り、表情は絶対零度と言わんばかりな顔をして俺の方を見ているソフィアさんがいる。

俺、何か悪いことした?




再び噴水に向かうと、そこには常に準備が出来ていたのか、以前デートした時とは違い、薄いカーディガンを羽織り、それに加えてふんわりとしたスカートを身に纏っている妹の姿がある。


普通の人なら人目ぼれしてもおかしくないだろう。事実、ソフィアの姿に惚けている人が多数だ。きっとそんな人と近づきたいと思ったのだろうな、何人かの男性が近づこうとした時、俺の存在に気づいたソフィアがパァッと明るくなりながら寄ってくる。


「お兄様!お待ちしておりました!さぁいま…か…ら…で…………も………………」


だが、俺の隣に姉のマリアの存在を認知した瞬間、とてつもない寒気とともに今さっき話したソフィアの様子となっていた。



「……これはどういうことですか?」

うん、とっっっってもこわいね?


身体中が冷や汗でいっぱいになりながらも、とりあえず説明だけはしなければと思い話そうとすると、先に姉さんが話し始める。


「あら、アクセルから聞いてたけどソフィアもいたのね。随分と成長しちゃって...お姉ちゃん嬉しいわよ」


「マリアお姉様、お久しぶりでございます。私もお姉様にお会いできて嬉しいです....ですがなぜ、お兄様と一緒にいるのでしょうか?」


再び背筋がゾッとするこの感じ....おかしい、この人たち仲が良いんじゃないのか?さっきまで近づこうとしてきた奴らはソフィアの様子を見て、即時に離れ始める。おいっお前らやるなら最後までやりきれ。


「そこの噴水でアクセルを見かけたのよ。成長した弟の姿に感動したわ。

それでさっきまで、アクセルとの時間を楽しんでいたのところよ」


「....オニイサマトノジカン、デスカ?」


ソフィアの視線が姉から俺へと移る。視線がじりじりと感じ、心を鷲掴みにされている気分になってしまう....怖いよ?


「お兄様?ソフィアをほったらかしにしてお姉様と楽しんでいたのですか?

ソフィアはとても楽しみにしていましたのに....どうしてソフィアのことを見捨てるのですか?」


「いや、違う。断じて違うぞソフィア?俺も今日はソフィアと一緒に回る予定だったし楽しみではあったぞ。でも姉上に連れて行かれて.....」


「....アクセルは私と会えて....嬉しくなかったの?」


「いや姉さん?違いますからね?姉さんと会えること自体はとても嬉しいですよ?でも流石にタイミングが悪いというかなんというか....」



「お兄様?」

「アクセル?」


.....どうして俺が一番悪いみたいなってるんだ?

その後、暴走した姉妹をなんとか宥めるのに数十分はかかった。

俺が一番泣きたいのに......





二人をなんとか宥めて、今俺たちは三人で王都を周っている。

構図としては左からソフィア 俺 姉さんだ。


うん挟まれることにはある程度予想はしていたが.....


「....」


「....」

.....何故か普通に王都を周っているはずなのに、ここまで空気が悪いことがあるのだろうか?しかも家族でだぞ?赤の他人ならいず知らず、やっぱこの人たち仲悪いんじゃないのかな?


そんな空気の最中、まるでなにも見えていないのか、複数の男性が近寄ってきた。

こいつら、度胸あるなぁとか考えていたら急に話しかけられた。


「おいおい、男一人にこんな群がる必要ねえってぇ。なあお嬢ちゃんたち、こんなガキよりも俺たちと来ないか?良いこと教えてやるからよ〜」


「そうそう、こんな平凡でなんの変哲のないガキに構う必要ないから...よっ」

すると、一人の男性が俺を足で突き飛ばしてくる。

考え事をしていたせいか、受け身をとれずそのまま倒れてしまった。


「いてっ」

ありゃりゃ吹き飛ばされてしまった。まぁ痛くも痒くもないからどうってことないかとか考えていたら、吹き飛ばされた姿を見た姉妹が俺に過剰な反応で駆け寄ってきた。


「お兄様!!」「アクセル!!」

ただ蹴られて尻もちついただけなのに、目を血走りながら身体をペタペタと壊れない物を扱うかのように触ってくる。な、なんか大げさすぎないか?姉さんなんて少し涙目で過呼吸を起こしそうじゃないのか?


「あ、あく、アクセル!大丈夫よね?お、お姉ちゃんをを置いて.....お、いて...はぁ...はぁ.....あ、あぁぁ......」


「ね、姉さん?大丈夫だから?ただ突き飛ばされただけですから」

過呼吸になりそうな姉さんを落ち着かせていると、複数の笑い声が聞こえる。あの男たちだ。


「ハハハハハっ!こんなヒョロヒョロなガキに必死にこいてやがる!こいつはぁ遊び甲斐がありそうだ」


「ほらっそーんなガキよりも俺たちと一緒に遊ぼうぜ〜」


「「.....」」

プチンっ

きっと音が聞こえるとしたら何かがきれたものだろう。

さっきまで阿鼻叫喚のような様子から一変、二人とも気味が悪いほどに黙っていた。

表情は俯いてるせいで見えないが......本能が告げてる。



、と


するとソフィアが何かの魔法を発動させ、複数人の男とともに浮き始めた。


「うわっ!な、なんだ!?」


「か、身体が勝手に!」


今度は男達が騒いでる中、二人が何かを話している。


「....ソフィア、私達をどこかに飛ばせないかしら?ここだと、流石にまずいわ」


「....えぇ、問題ありません。もとより、そのつもりでしたから」


二人の驚くほど感情が読み取れない声に驚いていると、マリア姉さんがこちらを振り返って申し訳なさそうに話しかけてきた。


「ごめんねアクセル?ちょっとお姉ちゃん達、この人達に用ができたの。

その間、少し待っててね?」

そう告げてその場にいた俺以外の人物は宙を飛び、どこかに飛んでいった。


「....あの人達、生きてるかな?」

自業自得とはいえ、二人の本気の怒りをぶつけられるであろうナンパ男達もことを少し気の毒に思いながら俺はその間買い物をするだった


「...お?これ、ソフィアに似合いそうだな.......」




気づいた時には見知らぬ草原にいた。

どうしてこんな所にいるのかが気づかず、普通は異常事態だが目当ての人物が目の前にいたことで、そんなこと考えていなかった。


「へ、へへっ何があったかは知らないが、都合がいいぜ。あのガキがいなくなったんだからな」

そう呟くと、他の奴らも同調したのかさっきまで焦りに散らかしていた顔が下品極まりない顔に変貌する。


「....また、お兄様をガキ呼ばわりと....」

今も殺さんとばかりのオーラを出して、ソフィアは問うが、鈍感すぎるのが良かったのかそれとも悪かったのか、そんなこと露知らずに返答をする。


「なんだ?あのガキのことが好きなのか?見る目ないなぁ、あんな奴のどこがいいのやら」


きっとここにアクセルがいたのなら「おい、どういうことだこら」と反応して少しはマシになったかもしれない。ただここにいるのは、のみ。


その暴走を止めようとする存在はここにはいない。


「....私のことも知らないのね」


もし、マリアのことを知っていたらおそらくこのような下品極まりない行動をすることはなかっただろう。しかし、この男たちが王都に来たのはつい最近、それに情報もろくに取ろうとしなかったため、マリアのこと.....英雄ブリュンヒルデのことなど何も知らなかった。


「さぁ、俺らと時間いっぱい良いことたくさんしようぜ!」

そう言い男たちは二人に近づこうとした....否、近づけなかった。


その瞬間、突然バランスを崩したかのように倒れたからだ。


「痛っ!くそっなん..........だ..................」

動けるはずもあるまい。それもそうだろう




―――脚という動くための部位が目の前に落ちていたのだから。



「あ、ぁぁぁあああああ!!痛い、痛い痛い痛い!!!」

脚が斬られたと認識した途端、男たちは騒ぎ始める。

一人は涙を流し、一人は痛みを通り越して気絶してる者色々な反応があった。


「うるさいですよ...お兄様を侮辱したのですからこれくらい当然ではないですか?」

男たちの脚を切断させた原因であるソフィアは何も感じないのか、無機質なロボのように表現を変えず淡々と伝えている。


「ソフィア、やりすぎよ。私にも残してほしかったわ」


「お姉様がやると、跡形もなく消し去るのでは?それなら私がした方が良いですよ。それに殺さなければなんとでもなります」


そう言いながら二人は近づいていく。さっきまで遊びの対象だった二人は男たちにとって恐怖へと移り変わることになる。


「ま、待て、待ってくれ!俺たちが悪かった!だ、だから命だけは....!」


「なにを言ってるのかしら?」

必死の命乞いを無慈悲に断ち切るかのようにマリアは語る。


「これはあなた達が始めたことでしょう?それならここで責任から逃れるなんて、できるわけないと思うわよ?....それに、アクセルを傷つけた....許せるわけないでしょう?」


その時、初めて気がついた。

二人から漏れ出る殺意と憎しみのオーラに、男たちはただただ恐怖に震えるしかなかったのだ。ただ仕方ないだろう。彼らは踏んではいけない龍の尾を何も知らずに踏んでしまったのだから。


「.....お兄様を侮辱したこと」


「....アクセルを傷つけたこと」



「「その身を持って罪を償いなさい」」



あ、あぁ.....察しただろう。自分たちは決してしてはいけないことをしたのだと。

そんな後悔を抱きながら、彼らは彼女らの怒りが収まるまで、身を持って味わい続けるのだった。





一方、遠くで男達の絶叫という叫び声が王都まで聞こえた頃アクセルは


「....これなんか姉さんに似合うんじゃないか?結構好きそうだし」


―――のんびり買い物を楽しんでいた。




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