第5話 アクセルだけがもつ「力」
「……さて、とここら辺でいいかな?」
俺は今領地の近くにある森の中に進んでいるところだ。目的地自体には着いたけどね。
混沌の魔女について聞いたあの後
父は飄々としてる態度から一変、真面目な態度で「その話題には触れるな」と釘をさされた。母に関してはとても不安そうな、そして泣くんじゃないかと思われるぐらいの表情で俺のことを見ていた。
………まぁ当然だよな。混沌の魔女に関してはこの場所ではある意味禁句に近いからな。
そもそもさっき言った通り混沌の魔女については、聞いても絶対話さないだろう。最悪の場合、それを聞いたものは命を奪われるとまで言われてる。
というか俺の場合、混沌の魔女については全部知ってるんだから聞く必要はないけどね。
まぁだからあんな事を言われたり、泣きそうな表情をされたわけだが…そこで本来の目的である外出許可を貰ったらあっさりと出た。
人間の心理を利用した方法だな。普通は躊躇されるところだが、あっさりと出たのだから面白いもんだ。
まぁ、そんなことはさておきだ
何故俺が本来の目的が外出することなのかというと…俺の力を確かめるためだ。
正確にはアクセルの、だけどな。
この世界には魔法という不思議な力がある
よくある話だ
まぁ少しだけ簡単に説明だけしておこうか
この世界における魔法を使う方法は2つある
1:体内の中にある魔力を使って、魔法を発動させる方法。
2:外にある「魔素」という粒子を利用して魔法を発動させる方法。
まず1に関してだな。これはこの世界における魔法を使う者の主流だな、というか2に関しては技術力が高い奴じゃないと扱えないからほとんどの奴がこの1の方法で魔法を使っている
体内の中にある「魔力」ていうのを利用してそれを「形」にさせることで魔法を発動させる。この「形」てのが重要で、よく聞くイメージしないとできないのと同じだ
じゃないといくら魔力があっても形にさせることが出来ないのだから、発動してもただの魔素に発散していくだけだからな
そもそも魔法の元が魔力で、そしてそのさらに元になってるのが、魔素だ。
魔力っていうのは体内の中に染み込んだ魔素だと認識してくれれば良い
簡単にいうと魔素が全てってわけだ
まぁイメージできれば魔法が使えるって訳ではないが…このまま2について説明しよう
2に関してはさっきの1の話を理解できれば、そう難しくない
つまり魔法っていうのは魔力でなく、魔素を利用した現象のことだ。
それを簡単にして今の人間が扱ってるのが魔力ってわけだ。
確かに魔素を利用した魔法は難しい。
でもそれさえ扱うことができれば、大抵魔力切れってこともないし、外から貰うわけだから
1よりも強力な力になるのだから少し卑怯技だ
…とまぁ魔法について説明はしたものの、おそらくだが今の俺には多分使えないだろうな。一応試してはみるものの。
「……炎よ」
シーン………
「水よ」
シーン………
「風よ」
シーン………
「雷よ」
シーン………
「大地よ」
シーン………
やっぱりか…この調子だと光と闇の力も使えないだろうな。そこはやはり原作通りということね。
少し補足だ。魔法を使うには魔力、魔素だけではなく、魔法適性という才能も必要になってくる
魔法にも種類があり、炎、水、風、雷、土、光、闇のそれぞれ7種類ある
普通ならどれか一つは適性があるのだが…
この男は違った
そう、アクセルは魔法適性がどれも全くないのだ
だからアクセルはどんなに頑張っても、魔法に全振りしようとも、魔法が使えない
才能とはたまに残酷なものだ…。
魔法を使えない人間が、魔法使いに勝てる可能性はどちらかというと低い。
だが、原作ではアクセルは様々な人間を皆殺しにしていた。圧倒って表現をしても良いほどに。
歴戦の戦士も、才能が溢れ出してるやつも、大陸で一番強い魔法使いと呼ばれるやつにも……彼は圧倒していたのだ。
では何が彼を強くさせたのか…その原因は2つある。
一つは
他の人よりも異常と呼ばれる程高い
「身体能力」
実はアクセル、幼い頃から身体能力が異常に高い。武器を持っただけで、使い方を理解したり、相手と戦うことでその一戦だけで相手の力、癖、弱点を理解したり
もっと言えば、初めて剣を握って一番強い騎士と模擬戦をしたところ、アクセルは勝ったのだ。なんの苦戦もなくね。
まぁ原作では戦うこと自体、家族のおかげ(せい)で禁止にされていたんだけどね
実は何故身体能力がこれほどまでに高いのかはある原因があるのだが……これは言わなくていいだろう。
そして二つめだ。これが使えると使えないとでは、大きく強さが変わってくる。
だからそのために今使えるか試そうとしたのだ
◇
魔法で最も大事なのは「イメージ」と「魔素の扱い」だ。
ここで魔素について少し言及しよう
魔素というのはこの世界「アトランティス」に覆われている粒子の事だ。
「地球」でいうところの窒素とか酸素とかの気体だ。あれに加えて魔素があると捉えれば良い。
魔素はアトランティス全体には広がってはいるが、その先の所、宇宙には広がっていないのだ。
………アクセルは考えた。魔法という概念を、そして知った。魔法に大事なのは魔素なのだと、だが自分は使えない。たとえ魔法についてどれだけ核心を得たところで使えなければ意味がない。魔素という、魔法に関するものである限り彼は使えないのだ。
アクセルは考えた。魔素というのはアトランティスで覆われてるものだと。
空を見上げながら考えた。そしてある疑問が浮かんだ
"あの空の果てには魔素はあるのだろうか?"
アクセルは考える。もしなかったら何があるのだろう?何を持ってあそこは均等を保っているのだろうか?アトランティスは魔素がないと、世界が保てず天変地異のごとき崩れ始めると言われている。
だが、あそこは違う。魔素がないのに保っていられるのだ。ではなんだ?なぜあそこまで穏やかなのだ?
アクセルという男は良くも悪くも純粋だった。家族の優しさを受け、彼自身もまた優しい存在に育っていった。
だが、家族という存在を失った途端、前までの優しさは一変、ただただ何も感じず本能と隠された憎しみに従い世界を破滅へと向かわせた。
アクセルは白にも染まれば、黒にも染まる。
それほど彼は純粋なのだ。
だからこそ、魔法が使えないというコンプレックスが彼を魔法の真理へと辿り着かさせる。
だからこそ………彼の考えは狂っていったのだ。
確証も根拠もない。ただ無意識に己だけを信じる、その得体の知れない考えを……
『空の果てには魔素とは違う別のなにかがあるんじゃないか?』と
その当時はまだ、扱うことはなかった。そもそもあるか分からないモノのことを考えても意味がないのだ。
だが、その真価が発揮されるのは全てを失ったあの瞬間。
彼は狂っていた。何も考えず、ただ本能が感じる。そこにお前の求めてるものがあると、彼は唱え始める。
そしてもう1人の男…転生者もまた求めてるものがあるのが分かると同時に、力を欲するかのように唱え始める。
スベテハ
全ては
『セカイヲハメツニムカワセルタメニ』
「大切な存在を守るために」
求める目的は違う。だが、その目的のためならどんなことにも躊躇いがない。
そんな、アクセル・アンドレ・レステンクールの物語が今、動き始める。
『「虚無よ…我に力を」』
俺がそう唱えた途端、手のひらに魔法とは違う得体の知れない何かが集まってくるのをひしひしと感じ取ることができた。
「はぁ…はぁ……で、できた……!」
俺は冷や汗をかきながら、アクセルのもう一つの強さの根源、「虚無エネルギー」をなんとか顕現させることができたのだった。
【小説家になろうにも投稿しています。
メインはこっちですが、小説家になろうの方もみてくれたら嬉しいです!!もし良かったらレビューやいいねをお願いします!!!】
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