15

「あれ、サイカの組んでた奴らだったのか! ごめん怪しかったから殺しちゃったよ。 本当にごめん」


 サイカは、枕を掴んでエイキに向かって勢いよく投げると、エイキの顔面に直撃した。


「すっごく、わざとらしい言い訳をありがとう」


 サイカは返ってきた枕を受け取ると、寝転がって頭に敷いた。


「もう今日は寝るよ。 消灯時間だから、続きはまた明日の自由時間にね」


 エイキは駄々を捏ねたが、直ぐに電気は消え、真っ暗になると、途端に大人しくなった。しばらくするといつも通り、エイキの鼻歌が聞こえてくる。


 耳障りではなく、むしろ眠気を誘う、心地よいメロディーと声である。唯一、九坂学校を経由しないで戦場にでたエイキは、異端ではあるが、シンエイとサイカにとってはとても刺激的で、新鮮で、学ぶ事の多い存在だ。


 二人のやり取りの最中に、大人しくていたシンエイは、真っ暗の中、自分の枕を持って静かにサイカのベッドに潜り込んだ。


 サイカの背中に引っ付いて眠るのがものこごろ付いてからの習慣であり、こうしないと眠れないのである。


 しばらくエイキの鼻歌が続いたが、鼻歌が止んでしばらくすると、三人の穏やかな寝息が微かに部屋に響いていた。


 おおよそ二時間後、二人の寝息が聞こえる中、目を覚ましたサイカは、暗がりの中、寝たふりをしたまま気配を探り、余計な動作を挟まないように、最短で獲物の首を取りに行く。


 シンエイに背を向け、横向きに寝ていたサイカは、横向きのまま、瞬時に身体を丸め、首に体重をかけながら、仰向けになるように体勢をねじる。勢いよく跳ね起き、片足で着地しながら勢いをそのまま回転に持っていき、獲物に馬乗りになり、首をとった。


 だが、サイカの下に居るはずの獲物の姿はなく、瞬時に気配で上に居ることを悟ったが、敢え無く逆に、組み敷かれてしまった。

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