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「エイキ、頭が良いのを隠してたの? 僕驚いて、まだ混乱してるんだけど」


「僕は元から僕なんだけど。 隠してたわけじゃないし、こんな真面目な話しする機会なかっただけだよ。 だって普段はこんな話ししないだろ。 言っとくけど、僕は頭は良くないし、戦場に出るようになる迄には、これくらいの知識はサバイバル術で詰め込まれるからね」


 サイカは喉を鳴らし、膝に置かれた拳を強く握りしめた。


「ちょ、ちょっと待って、話を戻すよ。 僕はまだ、エイキの質問に正しい答えを返せる自信が無いから、第四世代が来てからの事を話すから、それから汲み取って欲しい。 できるだけ詳しく話すから」


 サイカは、まだ呆けているシンエイのお腹を一発殴って正気に戻し、話を続けた。


「入校式だったね、校庭で行われたんだけど、趾行…でいいのかな。 まあその足が長いんだ、だから背が異様に高いのもあって、第四世代っていう新世代のプライドもあったんだと思う、完全に見下されてたよね。 精神的にも物理的にも。 教官達はそこまで気にしてる様子もなかったかな。 ね?」


 サイカがシンエイに同意を求めると、シンエイは慌てて頷いた。まだ戸惑っていたのか、ぎこちない様子が伺えるが、次はシンエイが話し始めた。


「でも教官も一枚岩じゃねえからさ、不満のある教官ももちろん居た。 第一世代とか第二世代の教官は特に顕著だったな。 ただ翌日から訓練が始まると一変したんだ。 もう反発する教官は、誰一人いなかった。 第四世代のフィジカルの高さは群を抜いていたんだ。 持久力、瞬発力、射撃、筋力、体術、反射。 戦闘技術においては、第四世代には敵わないだろうなと、誰もが思った」


 エイキは身を乗り出し、喉を鳴らし目を輝かせている。


「そんなに凄かったんだね。 じゃあ、今日の最後の訓練を第四世代がやったらどう?」


「四十キロ担いで、四十キロメートル走ると、一時間弱だったか、なあ?」


 サイカは大きく頷いた。


「とりあえず、俺たちは勝る所が何も無くて、一週間経つ頃には自信喪失、部屋に引きこもる奴が少数だが出始めた。 訓練も、明らかに第三世代の士気は落ちてたしな」


 シンエイは腕を組み、言葉を続けた。


「そんな時に、追い打ちをかけたのが教官達だった。 サイカはずっと、諜報科の誰かしらと組んでるからさ、嫌な情報も入ってくるわけよ。 第一、第二世代が使えるようになって二十年。 教官の中には前線を退いた世代の奴もいるだろ、そいつらがもう第四世代に期待しまくって、目を輝かせてるんだと。 それで入ってきた情報が、そいつらが俺らの事を見限ってるって話し 」


 エイキも腕を組み、話を聞いていたが、肩をすくませ、納得できないといった表情を浮かべた。


「待って、なんかおかしくない? 干渉出来ないように分けられてたんでしょ。 なんでそんなに第四世代に詳しいの? まさか全部諜報員からの話だって事はないよね」


 サイカは気まずそうな顔をして頷いた。


「実はそうなんだ。 実践と同じようにチームリーダーは諜報員と接触して組まないといけない。 だから、あちこちのチームで同じ話しが出て、僕らは信じてしまった」


「なるほど、やっぱりおかしいよね。 だって表向き活躍してる軍人は普通の人間だけど、実質、軍功を上げまくって、裏で功績を認められてるのは特S部隊の第一から第三世代だよね。 第四世代なんて実戦投入もされてないよね?」


 エイキは腕を組んだまま、ぶつぶつと呟きながら考えをまとめている。

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