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 シンエイとサイカは目を合わせた。エイキならば、大丈夫と判断したのだろう。シンエイはエイキの方に向き直った。


「仲間になった事だしな、信用するしかない。 第四世代の時の、二の舞にならないようにもしないとならないしな。 じゃあ、第四世代の入校式から話すか」


 シンエイはサイカを見ると、サイカは頷いた。彼らにとって新世代の入校は、期待と共に、死ぬかもしれない危険を伴うのである。


「第四世代が入校したのは、一年と少し前、俺たちはまだ一学級下だった。 大々的に、第四世代が入校するって教えられた時は、俺たちより教官の方が喜んでたよな。 念願の新世代だから、期待も大きかった。 俺たちも楽しみで嬉しかったんだけど、教官たちのあまりの騒ぎっぷりに内心嫉妬してる奴も結構いたよな」


 シンエイは、時々サイカに同意を求め、自分との記憶違いが無いか確認しながらゆっくりと話す。

 サイカはその度に頷いた。


「入校まで数日しかなかったから、急いで準備が進められたけど、幸い大きい校舎に寮だからな、工事が入るとかはなく、現世代と第四世代で、完全分離で入校する事になったんだ」


「完全分離?」


 エイキは首を傾げた。


「今の座学は一学級が三つから六つの教室に分かれて勉強してるだろ。 第四世代が入校した時は、更に一学級に現世代の教室と、第四世代の教室って分けて、実技も時間をずらして、お互い干渉しないようにされてた。 実質それが、最悪な結末になった原因なんだろうけど。 エイキは、現世代と第四世代で教官の態度が違ったら嫌だろ? 特に他人を贔屓して期待したりしてたらさ」


「当たり前じゃん! 贔屓されるのは好きだけど、違う人を贔屓して、放ったらかしにされたら…、殺しちゃうよね」


 今まで寛いでいたのに、一瞬にして背筋が凍るような殺気が部屋に充満した。


「おい落ち着け。 顔面凶悪になってるぞ、殺気収めてくれ。 まあ、それでだな、六学級から八学級、つまり十歳から十二歳の第四世代が、先に入校してきた。 第四世代にはまだ十二歳までしか居なかったからな。 それと、一気に全学級に入校したら教官が大変だからって理由らしい。 俺らは入校式で初対面だったんだけどさ、もう初対面から印象最悪。 な、サイカ」


 またもや、サイカに同意を求めると、サイカは思い出し、力強く頷いた。


「あれは最悪だったよね。 完全に現世代、第三世代を見下しててさ、教官のことも見下してたよね。 流石の僕でも、殺してもいいのかなって思ったけど、シンエイに止められたよ」


「あそこにエイキが居たら、殺戮の入校式って、学校史に残ってたかもな」


 シンエイとサイは、肩を揺らして楽しそうに笑った。


「酷いよ。 僕はシンエイが一番、手が早いと思うんだけどな」


 数分前の雰囲気とは一転して、和やかに会話は弾む、エイキは馬鹿にされ少し拗ね気味だが、何かを閃いたように身を乗り出した。

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