禁煙日記
楸
零日目
こういう物を書き始めるとき、だいたい最初の一行目に迷ってしまう。創作も同じようなものであり、最初の文章から「どのような文章に派生させるか」を考えて書いているから、最初の一文が決まらないといつまでも書くことはできない。まあ、この日記は創作ではないし、読む人もそこまでいないはずだから適当で良いことはわかってはいるものの、ここまで来たらこだわりたいような気もしてくる。だから、こんな冗長な口上を上げている。とても無駄でしかないのは自覚しているので、次の段落で本題に入ることにする。
ええと、単純に禁煙をしなければいけなくなった。この日記が始まったのはそれだけが理由にあげられる。なんで禁煙しなければいけないのか、それを語るとするならば一言だけ。いつか死ぬから、これに尽きる。上記は格好つけの要素でも文章でもなく、事実として。更に詳細を加えるのならば「あなた死ぬわよ」と医者に言われたことがきっかけになる。
そもそも、なんで喫煙なんかを始めてしまったのかと言われれば、単純にストレスが挙げられる。現在とは異なって真っ当な社会人として生きていた時代、どうしても暮らしている生活、もしくは社会からはぐれている気がして、それをストレスだと感じていた。自創作で言うのならば、社会とは氷塊であり、私はその氷塊から解け落ちた氷だった。一定の温度の差によってはぐれてしまった物質、元は似たような存在でしかないのに、どうにも馴染めないことを自覚すると途方もなく苦しさがやってくる。この苦しさは自己で完結することができればいいのだけれど、これが他者に所以すると本当にどうしようもない。ただでさえ通常の意識に対して反発して監督するような精神があるのに、そこに加味するような神の視点が他者を巻き込んだことによることを責めてくるのが本当にしんどい。俺はそのしんどさを自覚して、タバコを喫煙するに至った。上記の理由と「はぐれるならとことんはぐれてやるぞ」という気持ち、そして「これでいつか死ねたら楽やな」とかいう爽やかな希死念慮の演出から全ては始まった。まあ、タバコに関連する希死念慮なんて大概本物ではなく、それっぽい格好つけでしかない。大体のヤニカスも同じようなもんだと思う。
それから吸い始めて一年を過ぎたのがこの前の話。喫煙一周年を迎えたと同時にフリーターになったのが同時期の話。そして、禁煙とそのバイトからの転職が決まったのが今日の話。
元来、私は喘息を患っている。小児喘息と言われるやつらしく、幼い頃には肺炎で入院することもあったらしい。幼い頃の記憶なんておぼつかないいものであり、その時の記憶については全く覚えていない。だいたい家族と昔話をするときに挙げられる話題であり、苦笑をまじりながら出される事柄からも、まあ本当にあったことなのだろうとは思う。
ここで大体の人間が思うこととしては「なんで喘息なのに吸ってんの」ということなのだと思う。上記の理由を踏まえたうえでもなかなか理解しがたいことだと思う。ただ、聞いてほしい言い訳としては、喘息とか有る無しに、私にとってタバコの距離というものはあまりにも短すぎた、ということ。四六時中、家族はタバコを吸っており、当然のように副流煙を浴びせてくる。車の中出会っても換気をすることがなく、タバコの存在は私にとって当然のもの過ぎた。二十歳になった拍子に一度だけ吸ったことはあるものの、何がいいのかを理解することができず、そこから五年間は吸わなかった。まあ、だからこそ社会に貢献している身としての反抗が、一番身近にありささやかである「喫煙」という手段になったわけだが、別にこの思想についてを理解してもらおうとは思っていないので、文句は受け付けない。
ともかく、私は喘息を患っている身でタバコを吸った。タバコを吸って、埃やコンクリートの粉にまみれている職場に身を費やした。その結果が「吐き気を覚えるほどの喘息発作」であり、医者から「現状を変えないと死ぬ」という当然過ぎる発言だった。
というわけで、私は禁煙を今日からするに至る。死にたい、という気持ちは片隅にはあるものの、私にはまだ死は許されていないと思うので、とりあえずは生きていかなければいけない気がする。
今日を始まりのゼロとして、明日からは一の数字を増やせていけるように頑張ることにする。
とりあえず今日についてはこれくらい。
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