第16話 学校生活が変わる




 その後、グロアは病室を出るとバンとロンの二人が待っており、三人で病院内から出た。


 出て行くと、いつの間にか雨は止んでいた。

 バンはガッハッハと豪快に笑いながらグロアの肩を叩いた。


「良かったなぁ!! 仲直りが済んで!!」


 グロアはそれに対し、苦笑いすることしかできない。すると病院から出て今まで本の歩き読みをしていたロンが足を止めた。


「おん? どうしたロン」


 バンが声をかけるとロンは口を開いた。


「いえ、グロアさんのこの急激な成長、どういうことなのかと思いましてね」


 グロアはドキッとした。


 まさか自分がマガマガと違うことがバレたのかと。ロンはフッと笑うとこう言った。


「驚きました、まさに急成長です。まるでゲームみたいですが人は経験値というものを鍛えたり練習したり勉強したりすることで高まりますが、それだけでは能力は上がりません。経験値を力に変えなければならないのです。そしてそれは自然と目覚めて行くのです。一ヶ月後、一年後、などの長い時間があれば、一時間後、一日後などと短い時間の場合もあります。マガマガさんは恐らく一日でそれが一気に出たのでしょう。だからこんなに強くなったんです」


「さっきからあいつは何言ってんだ?」


「え、えっと……」


 バンは理解しておらず、グロアはロンの言葉を頭の中で噛み砕いている最中であった。


「まあ結局、マガマガさんがすごいってことですね」


 ロンは諦めたのか自分の考えを述べることをやめて結論づけた。


「あ、ありがとうございます」


 グロアは頭を下げようとしたが、マガマガがそういうことをするのかという疑問が頭をよぎりやめた。


「では今夜は良いものを見させてもらいました。さ、バン、私たちも行きましょう」


「おお、分かった」


 ロンはさっさと歩き、バンはじゃな、とグロアに向けて手を挙げると、走り出していった。


 グロアの肩の力が一気に抜けた。


 今さっきまで自分の一日がすごく激しく動いていると感じていた。家に帰らなければと思ったが、父親はまだ怒っているし、グロア自身も許せない。だから帰らないことを決めた。


(しょうがない、聞いたことがある。町にはホテルがあると。そこで休むしかない)


「まだここにいたんですね」


 聴き覚えのある声であった。振り向くとそこには、さっきまでいたロンであった。


「え、何でここに」


「貴方、マガマガじゃないでしょう」


 ロンはズバリ言い当てた。グロアがどう反応していいか迷っていると、それが答えだと言うようにニコリと笑った。


「まあ気づいたのはついさっきですが、常識だと思いますが魔力というのにも個性がありましてね、それでたまに観察する癖があるんですよ。個人の魔力の色や形を」


「それなら、初めから気付いていたんじゃないのか」


 返事はせずとも、少しスカした顔で肩をするめる。


「そうですね、私ほどになると机の後ろからでも個人の魔力が細かく見えます。ですが好みなどもありまして、マガマガさんの魔力は引きこもりになる素質があったからなのでしょうか、すごく貧弱で汚く醜かった。だからしばらく見ないようにしていましたが、貴方を見たらケタ違いじゃないですか。あの程度の男がこの短期間ですここまで成長するのはありえません」


 マガマガが随分と嫌われているのを聞き、どこか寂しいものをグロアは感じていた。


「だからわかりました」

 

「……目的は何ですか」


 その言葉が意外だったのかロンは少し口をとんがらせて眼を瞬いた。


「良いですね、話が早いです」


 言いながらロンはグロアに手を伸ばした。


「何のつもりですか?」


「おともだちになりましょう」






 次の日、グロアはロンの家の裏玄関から登校した。





「おはようございます、マガマガさん」


 校内に入ると、ロンが自転車にまたがり手を振りながら二人に挨拶していた。


 「おはよう……ロンさん」

 

 グロアはぎこちない笑顔しか出来なかった


「良い服着ておられますね」


 服といっても同じ制服である。


 ただ、グロアの制服はどこかわからないが気品のある雰囲気や醸し出している。


「ああ、一応この学校に来る際に買ってきたんだ」


「そういうのって学校は買ってくれなかった?」


「いえ、買ってくれないことも買ったのですが、金がもったいないということで制服グレードが酷いが、あまり質が良くない」


「まあ、でもこれは僕にとっては、こっちの方が好きなんんです。


「なるほど、そうでしたか。レトロな趣味をお持ちではにより。では行きましょう。


 まず周りにいる女子たちが悲鳴を上げた。

 それはまず、恐怖によるドン引きではなく、不清潔だかそうでないかであった。


 ジトジトと自分を見る視線にグロアは振り向くと自分を見ていた女子たちは小さく悲鳴を上げて、互いの肩を軽くハタき立ち去ったり、無視してそっぽを向く。


「大丈夫です」


 本が何な大丈夫なのか意味を考えていると……。


「おーい、お? グロアじゃねえか。お前も俺多々と一緒に登校か。よろしくな」


 バンが二人の前に自転車を漕ぎながら近づいてきた。


「なんだいつの間に友だちになったんだ?」


 好奇心満々の目の輝きを秘めている。


「ただ面白いと思ったから友だちになったわけなんです」


「なるほど〜。あ、チャイムなりそうだぞ、急げ!!」


 バンの一言でみんな走り出した。


 まともな友だちというのはこういう人たちのことをいうのかもしれない、と、グロアは思った

 




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