今ならまだ帰る場所があるってこと。

猫野 尻尾

第1話:少しだけ魔が差す出来事。

一話完結です。(=^x^=)


島本 浅葱しまもと あさぎは大学時代から付き合っていた島本 要しまもと かなめと結婚した。

ふたりの間に子供はいない。

共稼ぎの浅葱あさぎは結婚する以前から務めていた会社に今も勤務している。


社会的地位も人柄も申し分のない夫。

だけど浅葱は夫にめっちゃ不満がある。

今の夫はセックスに飽きちゃって浅葱を抱いてくれない。

夫が相手をしてくれないことで焦燥感に駆られる浅葱。


浅葱の体は夫と付き合ってた頃に快感を知ってしまってるから

セックスがないといられない体になってるのだ。

そうじゃなかったら、優しい夫と平凡な日々を送っていたことだろう。


セックスの喜び、快感を知っている浅葱は満たされないで欲求を持て

余す日々。

そのことについて何度か夫と話をしたが、話をした時だけ夫は相手を

してくれた・・・でも続かない。


不満は溜まって行く、一方。

ひとり自分を慰める日が多くなっていく。

それでも相手がいないとやっぱり気持ちは虚しくて満たされない。


愛のないセックスでもいい・・・この火照った体をどうにかしてほしい。

でも浮気はできない。


そんな日々の中、浅葱の会社「本社」から出向でフランスに行っていた

柏木 隆彦かしわぎ たかひこ」が帰ってきた。

隆彦たかひことは入社時からの同僚だった。

実は隆彦とはそこそこ親しくしていてその頃浅葱は彼を慕っていた。


だけど彼がフランスの旅立ってしまったので、縁が遠ざかった。

そしてその間に今の夫と付き合って結婚した。


浅葱は結婚したがフランスから帰ってきた隆彦は未だ独身のままでいた。

だが隆彦が本社に帰って来たことを浅葱は知らずにいた。


浅葱がまだ会社に勤めていることを知った隆彦は懐かしさもあって

浅葱の部署を訪ねてきた。

浅葱を見た隆彦は、浅葱は自分がフランスに旅立つ前からちょっとも

変わってないと思った。


「浅葱・・・久しぶり」


「え?・・・隆彦?・・・なに?いつフランスから帰ってきたの?」


「一週間ほど前かな」

「浅葱・・・元気だった?」


「うん・・・元気してたよ」


浅葱は懐かしさと今でも若々しい隆彦を見て、いっきに下半身が濡れた。

あそこが疼く。

いけないと思ってもどうしようもない衝動と欲情。


「旦那さんと幸せにやってる?」


「え?う、うん・・・」


「ねえ、積もる話もあるから今日会社弾けたら少しでいいから僕と付き合ってよ」


「でも・・・」


「どうせ、旦那さん帰り遅いんだろ?」

「いいじゃん・・・取って食おうってわけじゃないんだし・・・」


今は仕事中だし理性だって働く・・・少しくらい付き合うなら問題はないと思った。

それに隆彦とはいろいろと話がしたかった。


「それなら少しだけ・・・」


本当にほんの少しだけと思った。

それは浅葱にとってはとても新鮮で胸踊る再開だった。

もちろん浮気はいけないと思っていた。

だから深くは関わらないよう適当に切り上げて帰るつもりだった。


会社の近くの居酒屋で隆彦と久しぶりに飲んだ。


いい感じで盛り上がって、懐かしさも手伝ってテンションが上がった。

もうそろそろ帰る時間だと思って、自分が食べて飲んだぶんだけ払って

帰ろうと思った。

だけどこういう場合は隆彦から誘ったんだからお勘定は彼が持ってくれると

思った。


だけど割り勘。

え〜って思った・・・まあでも彼に甘えるわけにはいかない。


少し不満を抱えながら店を出た。

店を出たところで隆彦が浅葱を呼び止めた。


(来た・・・どうしよう)


浅葱は心なしか期待した。

このままホテルってこともありうる・・・隆彦と・・・?

独身の時は隆彦と関係を持つことすら考えてなかったのに?。


(要ちゃん・・・ごめんね、今晩だけだから、許して)


「浅葱、今夜は付き合ってくれてありがとう・・・また明日・・・じゃ〜ね、

おやすみ」


「え?帰っちゃうの?」


「そうだけど?・・・まだなにか言い残したことでもあるの?」


「そうじゃないけど・・・」


「あ、浅葱、なにか期待してるかもしれないけど俺、人の奥さんとは関係は

持たないから・・・それじゃ〜ね」


って言われた。


「めちゃ失礼だと思わない・・・人妻で悪かったわね」

「だったら女子高生でも口説けば?」

「ああ、もう期待しちゃった私がバカみたい・・・恥ずかしい」


浅葱は一時の迷いで間違いを犯すところだった自分を反省した。


「もう一度私の満たされない気持ちを要ちゃんに伝えよう」

「つい魔が差しちゃった・・・浮気はやっぱりいけないよね」

「私、目が覚めたからもう大丈夫だよ、要ちゃん待てって、すぐに帰るから」


恥ずかしい思いをした浅葱は早く家に帰って思い切り要を抱きしめたかった。


おしまい。




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今ならまだ帰る場所があるってこと。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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