無題 詩

@ogaprofane77

第1話 チマシギ鳥


母が飲んだ酒に精霊の芽が

紛れ込んでいた

その芽は、

父が追いかけ、

殺そうとしていた「チマシギ」鳥の

巣に身籠る

畑の中で

雨のなか馬鈴薯を焼きながら娘は

そんな神話を思い出していた

分厚い本がたくさん並んだ

書庫の眠たげな匂い

頁を繰る手が鋤なら

文字を書く手は鍬だ

わたしを育ててくれた骨だらけの叔父は

いまは墓のように眠っている


「チマシギ」鳥という鳥はいない

叔父のように架空だ

分厚い辞書に挟まれた叔父が

いまでは押し花の代わりだ

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