プロローグ

 1985年、ミハイル・セルゲーエヴィチ・ゴルバチョフ書記長が推し進める市場経済の部分的な導入を行う政策“ペレストロイカ”が提案され、実行直前まで行ったが、急激に経済改革した際の経済へのダメージが疑問視され、保守派が反対。

 保守派との間で意見がまとまらない中、ミハイル・セルゲーエヴィチ・ゴルバチョフ書記長が病死、エドゥアルド・シェワルナゼ氏、アンドレイ・アンドレーエヴィチ氏との政争の結果、後任にはゲンナジー・イワノヴィッチ氏が就任。

 ゲンナジー・イワノヴィッチ・ヤナーエフ書記長は市場経済の導入を段階的に行い、かつ情報の自由化も一部ではあるが段階的に導入していった。

 経済の改革や情報の自由化、東欧で広がる民主化の波、バルト三国の独立などでソ連経済は多少混乱を見せたものの、全体としては安定しており、ソ連経済は復興へと向かっていた。

 1991年8月20日、西側との融和や冷戦終結などに向け、ゲンナジー・イワノヴィッチ・ヤナーエフ書記長が後任にボリス・ニコラエヴィチ氏を指名、中距離核戦力全廃条約や第1次戦略兵器削減条約など、積極的な軍縮などで米ソ間の対立は緩和し、雪解けムードとなった。

 しかし、欧米やブラジルの急成長もあり、今までの大国としての地位は維持できず、国際的な立ち位置は相対的に低下していった。

 また1989年にポーランドやルーマニア、ブルガリア、東ドイツで起こった東欧革命やユーゴスラビアやアルバニアの体制崩壊と内戦によって、同盟国は中国に北朝鮮、モンゴル、ベトナム、キューバ、そしてアフリカの中小国までに縮小。

 さらに、冷戦崩壊後すでにアメリカにGDPの2.6倍以上の差をつけられていたことにより、アメリカと対立できる余力はなかった。

 なので2000年代はアメリカと共同歩調をとり、西側諸国とのさらなる関係改善や市場経済を見本とした省庁の更なる改革、新たな外貨獲得手段の開発などが進んでいき、アメリカが覇権を握る平穏な世界がやってくると思われていた。

 しかし2007年のリーマンショックや2020年のコロナショックによって世界経済は低迷し、一方でソ連は計画経済を基盤とした経済システムのおかげで被害は最小限に留まり、大国としての威信を取り戻した。

 また自信を深めたソ連はこれまでの対米追従な外交姿勢を辞めて、かつての様に世界各地での革命支援と社会主義陣営の強化・融和政策、軍備の拡張を行うことになった。

 これにより日本及びヨーロッパ諸国などではソ連を軍事的脅威とみなし、2020年には米ソ間で冷戦が勃発、国際的な緊張が高まり、ヨーロッパやアメリカ、東アジア諸国を中心に軍備の拡張が行われた。

 2023年4月、ソ連と国境を接する国の一つであるフィンランドがNATOに加盟した。

 これを受けソ連政府は、

「今回のフィンランドのNATO加盟は1990年7月にロンドンで交わされた約束に違反している。これは信用を揺るがす大問題であり、これは我が国家の安全保障を揺るがす一大事である。到底許されることではない」としてフィンランドおよびNATOに強い非難をし、国境付近の基地の設備増強や監視の強化、ヨーロッパ上空への偵察衛星の打ち上げを複数回を行った。

 これに対しNATOは、

「これはフィンランド側の強い要請であり、かつ国際的に認められたことである。ソ連が行ったことはフィンランドや我々の独立と主権を脅かそうとする行為であり許されざることである。」としソ連を非難。

 またNATO側も監視の強化や周辺基地へのミサイルの配備、偵察衛星の打ち上げを行い、国際緊張は一触即発の事態となった。

 2023年7月30日、カリーニングラード上空を航行中のリトアニア国籍の哨戒機がソ連側によって撃墜される事件が発生した。

 これに対しリトアニア政府は、

「ソ連側の行動により我々は人的損害を被った。これは我が国に対する宣戦布告である。我々は世界の秩序の為、ソ連の行動を断じて許さない」として2023年9月9日、ソ連へ報復攻撃を開始。

 ソ連政府は「弾頭ミサイルだと誤認しての行為であり、決して故意ではなく宣戦布告行為でもない」という声明を発表したがこれは聞き入れられず、厶ルマンスク、ミンスク、スモレンスク、レニングラードなどの主要都市が爆撃された。

 同じバルト三国であるエストニア、ラトビアは集団的自衛権の行使として参戦を発表したが、他のNATO加盟国はソ連への経済制裁を発表。

 開戦から一週間はバルト三国とソ連間の戦争で収まっていたが、2023年9月12日にソ連軍がリトアニアのシャウレイ空軍基地、エストニアのアマリ空軍基地を爆撃したことによりNATO加盟国の怒りを買った。

 2023年12月19日、ベルギー、デンマーク、イギリス、ノルウェー、オランダ、ドイツ、アメリカ、ポーランド、スペイン、フランス、ルーマニア、ポルトガル、チェコ、カナダ、イタリア、ハンガリーが集団的自衛権の行使として参戦を発表、ソ連へ侵攻を開始した。

 翌日にはソ連の友好国である中華人民共和国が声明を発表、

「アメリカは我が国の領土に不法に軍隊を駐屯させており、我が国の安全保証に関わる」としてアメリカへ宣戦布告、台湾へ侵攻を開始した。

 また、同日に北朝鮮も声明を発表、

「大韓民国は我が国の領土を不法に占拠している。これは許されざることであり、我が国の安全保証に関わる」として大韓民国へ宣戦布告、朝鮮半島南部へ侵攻を開始した。

 またソ連政府は非常事態宣言を発令、情報の部分的な統制や軍需品や鉱産資源の生産強化、プロパガンダによるナショナリズムの増強などを行い国家総出でこの戦争に臨もうという世論を確立した。

 やがて社会主義VS資本主義の第三次世界大戦へと発展し、各地で大規模な戦線が構築され、熾烈な争いが繰り広げられることとなった。

 開戦当初は、長期間に渡る戦争になるものの全体的にはアメリカ・NATO含む連合国側が有利に進めると思われていた。

 しかし連合国側は東シベリア海ではソ連・中国率いる枢軸国側の防御が激しく上陸できず、アメリカ軍はアラスカ・東南アジア・ヨーロッパの3つに戦力を割かなくてはならなくなり、東南アジアでは中国海軍の連勝が続いていて、戦線は膠着していた。

 しかし枢軸国側も西はNATO、東はカナダ・アメリカ含む多国籍軍に挟まれており、挟撃される可能性も捨てきれない。

 連合国・枢軸国双方がこの状況の打開策を求めている状態であった。

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