へんなねこ / 童話・朗読台本
よるん、
へんなねこ
あるところに、不思議な模様をした猫がいました。
まあるい輪っかの中に小さなてんてんがいっぱい。
猫は、自分の模様が嫌で嫌でたまりませんでした。
猫が町をてくてく歩いていると、
「やあ猫くん、君は変な模様だねえ。」
お散歩中の犬が、そう言いました。
「そうだね、ぼくは変な模様だ。」
猫はうつむきながら、とぼとぼ歩きました。
そのまま町を歩いていると、
「やあ猫くん、君の模様はどうしてそんなにてんてんがあるんだい?」
えさを食べているねずみが、話しかけてきました。
「そうだね、ぼくはてんてんでいっぱいだ。」
猫はまた、うつむきながらとぼとぼ歩きました。
そのまま町を歩いて、路地裏に入りました。
路地裏には、猫の溜まり場がありました。
シュッとして、自信満々の綺麗な猫。
丸っこくて、ふわふわの可愛い猫。
色んな猫が集まってきます。
「どうしてぼくは、変な猫なんだろう。」
猫はその場から逃げ出してしまいました。
「ぼくも、綺麗で、ふわふわだったらよかったのに。みんなが、うらやましい。」
猫は、走って走って、町から飛び出します。
すると、知らない景色が目の前に広がりました。
町の中からでは見られないような、大きな原っぱと、大きな空。
猫は、目をキラキラさせて、その光景を見ていました。
「わあ、こんなところ、知らなかった。」
猫は町の中から出たことがありませんでした。
ふと、猫の頭に、小さな鳥が止まりました。
「やあ君、町の外は初めてかい?」
鳥は、ご機嫌そうにさえずりました。
「君は、珍しい模様なんだね。他の猫にはない、特別な模様だ。」
鳥にそう言われて、猫はとてもびっくりしました。
「ぼくの模様は、特別?変じゃない?」
「変なものか。町の外でも、どんなところでも、きっと君の模様は活躍するよ。だって、どこから見たって、君がここにいるって分かるからね。」
猫は、そうか、と言い、鳥にたずねました。
「ねえ鳥さん。ぼくに、外の世界を教えてよ。」
鳥は、嬉しそうに羽をはばたかせました。
「それなら、一緒に見て回ろうよ。君なら、ぼくが空を飛んでいたって、どこからでも見つけられそうだ。」
猫は、誇らしげに、胸をそらしました。
「ぼくの模様は、特別なんだね。ぼくしか持っていない、めじるしだ。鳥さん、ありがとう。ぼく、鳥さんと一緒に外の世界を旅してみたいな。」
鳥は、大きく羽を広げて、猫の頭から飛び立ちました。
猫は大きな一歩を踏み出します。
鳥が猫から離れて、悠々と空を飛び回っていても、一緒にいることが分かります。
どこでだって、自分を見つけてくれる。
猫にとっては、それが一番、嬉しいことなのでした。
おしまい。
へんなねこ / 童話・朗読台本 よるん、 @4rn_L
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