第2話 飛行船ツェッペリン

オーランド王国とオストラント連合王国の国境の間に設けられた不干渉地帯、通称オルドリン大森林、そこでは魔物や盗賊が多く出没する危険地帯であるため両国の騎士団や国境警備騎士団によって管理されているが現在は国外追放処分を下された犯罪者の流刑地として使われている。

そして今、新たにこの地に送られてきたある犯罪者を乗せた一台の馬車がオルドリン大森林前の関所に到着した。馬車には国王親衛隊の紋章が描かれていて、国王の命をうけてやって来たのは明らかでありどうせ反逆者の移送だろうと関所に務める衛兵は考えていた。

「ここでいい、下せ」

馬車の指揮官、親衛隊副隊長 エルンスト・アームストロングは罪人を下ろす様に指示を出す。

「イエス、マイロード」

指示を聞いて、馬の手綱を持っていた親衛隊員は馬車を降り、荷台にいる罪人、黒崎祐一を馬車から下りるように命令する。

「おい、降りろ」



「ようやくか...思ったよりも早く着きましたね」


「貴様を乗せるにはあまりに贅沢すぎるが、国王陛下の命令だ、従うしかあるまい」

黒崎が乗せられていた馬車は移動系特殊スキル持ちの馬を2頭使用する長距離行軍用の馬車で通常の馬車の3倍の速度で走ることができるため、主に要人の輸送に使われる。だがそんな貴重な馬車を反逆者に使う事に不満を持つ親衛隊の男は上司である

アームストロングに敬礼をした後、森へ連れて行こうとするが

アームストロングに

「貴様はもう行っていいぞ、私自ら始末をつける」

と言われ。

「....イエス、マイロード」

不満ながらも納得し敬礼してから仕事に戻る衛兵と同僚を見送った後、アームストロングは持っていた葉巻に簡単な火魔法で火をつけると口に咥えて一服する。

「悪かったな、お前と親しいことが知られるのはまずいんでな」

「いいんですよ、アームストロング副隊長、それよりも貴方に聞きたいものがあります」


「何だ黒崎、手短に話せ」

葉巻の煙を吹かしながら黒崎の話を聞くアームストロング


「何故あの国王に支えているのですか?貴方程の人望と力があれば他国で騎士団を結成する事も可能なはず...」




「お前なら分かる筈だ...この国は我々がいないと滅んでしまう事くらい」


「権力の腐敗が進み、貴族連中を支えていた騎士もまともな奴は国外に逃げ、もはや騎士団は半壊状態、国を守る兵士も殆ど居なくなった」

もう終わりだとアームストロングは語る

それを聞き黒崎はある提案をする。

「私と共に来ませんか?」

長年支えて来た祖国への裏切りの勧誘だった。

だがそれを聞いたアームストロングはその誘いを一蹴し

「この国を裏切る事はせん、この国のを見届けるまではな」

と固い決意を親友に話す

「そうですか...残念ですね。ですが貴方の最後には幸福が訪れるように祈っていますよ」

「あぁ...黒崎も達者でな」



「この国から去る僕を許してくれ....」




「どうやらちょうどが来たようですね」


「迎え?何処からだ?」

足を止めて他国と繋がっていたのかと一瞬考えるアームストロングだったが召喚されて以来この男はこの国から、王宮から出たことがないことを思い出し、すぐにその考えを消す。

「私が、何の考えもなく技術を広めていたと思いますか?」

黒崎には考えがあった。

「なんだ?辺りが暗く...あれは...なんだ?」

辺りが夜の様に暗くなる、黒崎とアームストロング副隊長が空を見上げると雲と雲の隙間に何かとてつもない大きさの船の様な何かが見えた。

「何と.....このようなものが存在したとは...」

アームストロング副隊長は信じられなかった。頭上に広がるその光景に...

「あれこそが私が目指していた空を制す為の船、ツェッペリンですよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る