異世界で魔工装具士になりました〜恩返しのために作ったら大変なことになったみたいです

SILVER BUCK(アマゴリオ)

プロローグ


 高校生活最後の冬。


 彼は、学校の空き教室で開かれた、部活の送別会に参加していた。


 工業高校のロボット部。趣味と将来を考えて入った部活だが、お陰で色々と学べ楽しめたようだ。


「先輩、お世話になりました」


「これからのロボット部を頼むよ」


「はい、僕も先輩の行く工科大学を目指します」


「待ってるぞ」


 後輩と制服姿での最後の会話をし、学校からの帰宅途中、突然凄い衝撃に合い彼は意識を失った。



◆ 



 彼が再び気が付き、辺りを見回すと壊れた馬車らしい残骸と、大人達の死体がゴロゴロと転がっていた。身につけている装備から兵士なのがわかる。


(どこだ、ここは? 事件? 事故? )


 そして自分を庇うように抱きかかえ、命が尽きた女性の死体。既に冷たく時間が立っているのがわかる。


(この人が守ってくれたのか? )


 抱かれていることを不思議に思い、自分の身体を見回すと、とても幼くなっていることに驚いた。


(身体が小さい! 幼くなっている? )


 この女性はもしかしたら母親だろうか。古風なドレスが鋭い何かで切り裂かれ、その傷跡からはかなり出血していた様だが、今では乾いて固まっている。


(うっ、頭が痛い、意識が…………)


 しかし、その光景を最後に彼は再び意識を失った。



 


 彼が意識を失って数時間後、その凄惨な場所に一台の馬車が通りかかる。

 立ち止まり、御者台から一組の男女が降りてきた。

 辺りを警戒し、倒れている兵士達に声をかけるが返事がない。


 男は色黒で、小柄だが筋肉質で堀の深い顔。そして立派な髭を蓄え眼光が鋭い。

 女はスラッとした体型で綺麗な顔つきだが、目じりが少し釣り上がっており、キツめの印象を受ける。頭の上に二つの尖った動物の耳らしきものがついており、尻からは、ネコ科の尻尾のようなモノが生え逆立っていた。


 何やら二人で相談した後、女は女性の死体に近づき祈りを捧げた後、抱える手を丁寧に外すと幼子を優しく抱き上げ、男と共に馬車へと戻り急ぎその場を後にした。


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