第4話 四日目

 いやいや、流石に百羽は無理でしょ。

 何であんなに集まっているの?

 勝てるわけ無いやん。

 幾ら弱いからって、あんなにいたら串刺しにされるわ。


 愚痴りたい気分ではあるが、一人暮らしの俺には愚痴れる相手もいない。

 友達はいるにはいるが、無職になったのを知られたくないので連絡したくない。知ったら絶対に揶揄いに来るから、せめて転職してから知らせたい。


 今日もダンジョンに潜っているが、やはり階段の前に百羽はいるだろうツノ兎が居座っていた。


 他の探索者が倒してくれないか期待していたのだが、ダメだったようだ。


 仕方ない。


 俺は鞄から網を取り出すと、ツノ兎の群れに放り投げる。


 上手いこと群れの大半を網の中に入れる事に成功した。

 だが、五羽のツノ兎が網の範囲から逃れており、こちらに気付いて向かって来る。


 どうする?引くか?


 一瞬逡巡するが、五羽ならいけると思い、迎え撃つ。


 避けて避けて、一羽倒す。

 避けて避けて避けて、一羽倒す。

 避けて、避け切れない一羽を盾で防ぎ、体勢の崩れた俺に突っ込んで来るツノ兎を魔法で串刺しにする。


 あと二羽。

 その内一羽は盾に突き刺さっているので、そのまま地面に叩きつけて倒す。

 残り一羽となったツノ兎など恐るに足りず、避けた瞬間に打ち下ろして倒した。


 ふう、と息を吐き出す。

 達成感がもの凄くある。


 だが、これから網に掛かったツノ兎を始末しなければならない。


 時間も勿体無いので、さっそく棍棒を振り翳して一体一体倒して行く。

 網の中で蠢く大量のツノ兎は、ある種の恐怖を覚えるが流れ作業をするように感情を無にして振り下ろす。


 作業を繰り返す中でふと思った事がある。


 そう言えば、魔法を使っても疲れなかったなと。


 そう思った時には、すでに魔法を使っていた。

 俺は考えるより先に体が動くタイプなんだろう。たぶん。


 そして後悔する。


 土の棘がツノ兎を貫くと、急激に疲労が襲い膝を突いた。

 どうやら魔力は成長はしているようだが、二度の魔法で限界のようだ。


 まだ半分くらいのツノ兎が残っている。

 疲れた体を引き摺って作業に戻る。

 何だこの重労働は、割に合わないじゃないか、流石は3K職場だ。


 意識が半分朦朧としながら進めていると、また透明なガラス玉が落ちていた。

 拾うと手に吸い込むように消えて無くなる。

 どうやら、また幻覚を見たようだ。


 全部倒し終わり、角を回収していると時刻は夕方過ぎになっていた。


 その頃には、魔力も回復したようで体調も回復した。

 今日はここまでにしておく。


 帰りにスーパーに寄って、ビールと唐揚げ、枝豆を買って帰る。


「今日も乾杯!」



ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 4

スキル 地属性魔法 トレース


ーーー

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