第59話 梅子、崇徳に回帰?&脚注①讃岐の松

逆に信あれば徳ありの反証のような気もしますが…とにかく、拙僧へのご断定は甘んじてお受け致します。どうぞ、そのままクワンティエンの寓話へのレクチャーもなさってください」と泰然として先を促す。ところが「何い?信あれば徳ありの反証…?!」と僧の言を小声でつぶやいては梅子の様が‘荒ぶる神’へと、いよいよ変身して行くようだ。かつて配流先の讃岐国へ慰問に来た西行法師に臨んだ、鬼神と化したかの崇徳上皇のごとき様へと。850年後の現在に再びの白峰が展開されるのだろうか?



♬ 讃岐の松山に松の一本ゆがみたる、もぢりさのすぢりさに、猜(そね)うだるとかや、直島のさばかんの松をだにも直さざるらん ♫


〔※以下脚注:上の歌詞は讃岐に遠流された崇徳上皇をからかって当時の民衆が歌ったとされる今様(今で云う歌謡曲?)ですが、その歌詞がかの著名な梁塵秘抄に残っています。ではこの歌集の選者たる後白河上皇は、はたしてどんな意趣を以ってこの歌を選んだのでしょうか?ちなみにこの後白河上皇は思わぬ形で即位するまでは言葉は悪いが、いわば「うつけの君」とでも評されるような、世事に疎い面があったとされる人物です。源氏物語内の八宮とはまったく異なる意味合いにおいてですが、彼、後白河は「即位するなど自分には端っから無理」として、もっぱら今様などにうつつをぬかしていたのです。それが棚ボタで即位の機がめぐってくるとまるで人が変わったかのように権力指向となり、源頼朝から「三界一の天狗め」と揶揄されるほどに、しぶとく、図々しく、実に長期に渡って皇位に君臨し続けたのでした。

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