第16話 運命との、真実の邂逅
漆黒のローブを
……私ことルークと目が合い、一瞬だけ驚いた顔をする、と。
「フムッ? ……この場にありて、私と同じような顔……見慣れぬ衣装ではあるが、果たして偶然と呼ぶにはあまりにも不可解。貴殿は一体?」
「フム、冷静に状況を判断しようとする姿勢、やはり共感を覚える……私はルーク=アロイス、並行世界から来た貴殿の同一人物、と言って理解できるだろうか?」
「別世界から……フム、それ即ち、世界は些細な選択により無数に分岐し、別の可能性を持つ……まさに並行世界が存在し、貴殿はそこから訪れた、私の同一人物というコトで……認識に間違いはないだろうか?」
「フム、その通りである。ロジカルに理解が早くて助かる」
「否、次元に干渉する〝魔法〟の研究も存在する、実現は困難であるが――だからこそ魔法的解釈で理解しているのだ。即ち、マジカルである!」
「フフッ、なるほど、マジカルか!」
「フフッ、理解が早いな、なるほどそれがロジカルか!」
「ちょちょちょ待てニャ、待てニャ……クッソややこしいですニャ、オメーら同時に喋んなマジでこんがらがるニャン! そんで互いに理解が早いニャンね、逆にオカシイんちゃうかオメーら!」
何やら猫メイド・アビィが文句を言ってくるも、私とルーンが「?」と同時に首を傾げると、「クソが!」と
が、それはそうと――エメリナ姫は、何やら呆然としていて。
「――――えっ? あな、たは……ルーン、と? えっ……そんな、わたくし……あなたと、どこかで……確かに……」
「フム。……エメリナ姫、まさか昔、私と出会ったコトを、
さすが並行世界の私、ロジカルに気が利くが――そんなルーンが語るのは。
◆ 回想開始 ◆
ルーンが語ったのは、エメリナ姫が赤子で―――同じくルーンも赤子だった頃、王宮で一度だけ出会ったという思い出話だった。
『バブー(フム、宮廷魔法使いを引退し隠居していた両親に連れられ、何やら
『――――キャッ、キャッ♪』
『―――バブフムーッ!?(てっ――天使だァァァ!? 赤子にして既に輝くような気品、聖女の如き笑顔! このルーン=アローズ、今まさに運命に出会ったと言って過言であるまい! 嗚呼、決まった……我が生涯、彼女を守り愛すために、捧げると誓おう! そう、この奇跡こそ、奇跡こそッ―――)』
『……あら? 見知らぬ赤ちゃんが……どうしたのかしら、まさかこんな小さいのに、一人で来たわけじゃないでしょうし……近くにきっとご両親が――』
『バブッ――――マジカルゥゥゥゥゥ!!』
『キャアアアアアア!? シャベッタァァァァァァ!!』
◆ 回想終了 ◆
「―――という訳で私ことルーンはその日から(生後三ヶ月)、いつか姫の役に立てるようにと、魔法の研究を始めたのだ。そして近頃の魔王軍の侵攻が激化したコト、更には姫の危機を知り……研究の成果を
「……おーし、次はわたしの仕事ニャ。耳かっぽじって良く聞けニャ」
ルーンの事情説明が終わるや否や、猫メイド・アビィが――
「―――いや生後三ヶ月でどんだけハッキリ記憶とかあんニャ!? おかしいニャろ早熟って問題じゃニャーぞ! つか〝バブー〟一つにどんだけ意味籠めてんニャ万能言語か! そんなん納得できる人間ばっかじゃニャーぞ世の中!」
「フム、分かるぞルーン氏―――私も胎児の頃の記憶とかハッキリあるし」
「ここニャ変な奴しかいねぇニャア! どいつもこいつもだニャ全く!」
何やら猫メイド・アビィは
と、事情を聴いたエメリナ姫が――〝ハッ〟としながら口を開いた。
「……あ、ああ……ああっ! わたくしも……薄っすらと、覚えています! さすがにあやふやですが……暖かな陽だまりの中、わたくしも、〝~ジカル〟という言葉を聞き……運命を、確かに感じたこと……さすがに! あやふやですが!」
(エメリナ姫も結構、覚えているような気もするが……まあ彼女も天才の類だしな。とはいえ無粋なので、黙っていよう)
「そうです……わたくしはルーク様と、初めて出会った気がしていなかった……それはルーク様が、あなたの……ルーン様の、並行世界の同一人物だったから……? ああ、わたくしは……わたくしは、何という間違いを……!」
「ひ、姫様っ、仕方ないですニャッ。そんな赤ちゃん頃ンこと覚えてるヤツらのがオカシイんニャ。むしろ結構、覚えてるだけでも大したもんニャよ、いやガチで」
猫メイド・アビィに励まされるも、エメリナ姫は両手で顔を覆い――そこで、敵対者たる魔王が重低音の声を発してきた。
『バッフォッフォ……そろそろよろしいでしょうか?』
「アッハイですニャ。すんませんニャ、こっちで勝手に盛り上がっちゃって。では、どうぞですニャ」
『いえいえ、存在を忘れられてないんなら、まあ良いです。さて……バッフォッフォ、どうやら変わり種の助っ人が現れたようだが……まさか貴様ら、それでこの魔王に、勝った気になっているのか?』
いまだ自信の衰えぬ口調で、魔王は巨大な口を
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