2 緊急事態宣言
「緊急事態を宣言します。不要不急の外出は控えてください」
各国政府、そして自治体が、パンデミック抑え込みに血眼になった。しかし、認知症患者は記憶力に問題がある。彼らは緊急事態宣言が出ていることをすぐ忘れてしまう。たとえ覚えていたとしても、今自分がしようとしている外出が不要不急かどうかわからないし、そもそも自分が外出しているかどうかさえ、いや、外出と言う言葉の意味すら分からなくなったりする。
その上、彼らの症状の特徴は俳諧だ。行政が外出を避けて欲しい感染者が、それを自分の事とわからない上に、自由にしかも元気に外出して動き回るのだ。お手上げだ。行政の宣言は全く効果が無くパンデミックはさらにのびのびと広がって行った。医師の多くも感染、発症した。
感染者が全世界人口の80%を超えるまでに、それほど時間はかからなかった。認知症の人がマジョリティーを占める世界が形成されたのだ。認知症の人が大多数、ノーマル、標準の世界だ。その後、集団免疫が達成されたというニュースもでた。社会は20%の異常な健常者と80%の正常な認知症患者に固定された。これはそんな認知症患者がマジョリティーとなった時代の出来事だ。
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