インディー:異世界つくっちゃお!!(仮)

@elspi

第一章「持たざる者の覚醒」

第1話 持たざるVLiverの一日

カタカタ!!カチャカチャ!!

カタカタカタカタ…


???「んぐ!…この!!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」


ワンルームの部屋の中、床にはごちゃまんと物が散乱

壁にはゲーム、アニメなどのポスターが所せましと張られている


床に置かれたパソコン。そのディスプレイに向かってひたすらゲームコントローラーを操作するジャージ姿の女。(髪の毛は雑にカチューシャでまとめられおでこがキラリと光る)

その隣にはもこもこな毛に身を包んだ猫が横たわりスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている


???「んが~!は?は?何それ!はあああああ???ねえ見た!?見た!?ありえねぇから!!」


このしょうもない叫びをあげているのが私こと星之 久里恵(ほしの くりえ)だ。

職業バーチャルライバー。主にゲームの配信をしている。

人生を半分諦め一生これで生きていこうと心に決めている。

いや・・・いた。


久里恵「は~やってらんねぇ…完璧にやられたわ…」


パソコンのディスプレイにはゲーム画面の横に猫耳イケメン男性が映し出されている。名前はエリク。私の配信用アバターだ。ダンナを妄想で擬人化した結果こうなった。反省はしていない。


視聴者A「wwwwwwwwwwww」

視聴者B「あれはさすがに草」

視聴者C「努力が足りないwww」


エリク「お前らやさしくしろ!!」


丁度今対戦ゲームで大負けしたところだ。

大して上手くも無いし惰性で続けているだけだった。

それを面白がる奴らが居るからなんとか続けていられている。


(システム)視聴者G[¥500]:対あり~酒でも飲んで寝な!!w


エリク「Gさんありチャー!酒でも飲んで寝な?って、せやな~おけマル~!今日は飲むぞ~!!!」

視聴者G「今日”も”だろwww」

エリク「うっさい!!www」


(システム)視聴者K[¥3,000]:今度俺と対戦しようぜ!

(システム)視聴者Z[¥10,000]:次回も楽しみにしてるお(*ฅ́˘ฅ̀*)


エリク:Kさんありチャー!対戦ぜひぜひ!Zさんありチャー!おう!次回も絶対見てくれよな!!!


※ありチャー:チャージ(投げ銭)ありがとうの意味


と言った具合に、こんな私にもお恵みをくれる粋な奴らが居るから何とか生きていけるのだ。感謝だ。


ひとしきり配信の締め挨拶をし、配信停止するとそのまま後ろにドサッと寝転ぶ。

人をダメにするもちもちクッションでもっとダメになっていく私。


久里恵「はぁ~~~正直シンドイ。っていうか目が!目がつらたん!!」


目が充血し刺すように痛む。

前にもあったが40歳過ぎてから悪化する一方だ。

床に転がっていた目薬をひょいと拾い上げ点眼する。


ポタッ…


久里恵「ンヒィィィィ!!!きっくぅぅぅぅぅ!!!」


すると横に寝転がっていたダンナがむくっと起きンーーーと猫背伸びをすると

のしのしとお腹に乗るとおしりを私の顔に向ける。ゆっくり優しくおなかをモミモミしながらもっふもふなしっぽをふぁさあああと顔をなでるようにしてくる。


ダンナ「なぁぁぁぁん」

久里恵「くしゅぐったい!!ダンナ!くしゅぐったいから!!でも癒される…v」


思わずダンナを両手でワシワシもふもふする私

ダンナはいつもこうして癒してくれる気のいい奴だ

ただし食べること以外はな…


時計の時刻はAM2:10を指している。

ぐぅぅぅ…

そういえば今日も配信前から何も食べてなかった。


久里恵「コンビニ…行かなくちゃ…だるっ」


気だるい体をよっこらせっと起こして、ダンナをやさしく床に降ろしてよしよしすると、私は近所のコンビニに向かった。


ピッ(端末にスマホを当て認識)

ウィィィィン(自動ドアが開く)

???「いらっしゃいませ!AIスタッフのアイコです♪ ごゆっくりどうぞ♪」


つい最近コンビニは無人化して店員はおらず、カウンターに備えつけられたモニターのAIアバターが挨拶をしてくれた。

店内には商品は陳列されておらずこのAI端末が3台並んでいるだけだった。


久里恵「はいはい、いらっしゃいましたよぉ~私が。」

  どうせ誰も聞いてないだろうからと半ば投げやりに言う。

アイコ「ようこそ、私さん!」

久里恵「(ビクッ)うお!これ反応するの?すげ!!」

アイコ「はい、会話もできますよ♪」

久里恵「はえ~進んでんな~中身人いるんじゃないの?」

アイコ「いいえ、自立思考型AIで対応させて頂いています♪」

久里恵「あ、そう…よろしくね~」

アイコ「こちらこそ、よろしくお願いします♪(にこっ)」


無人化とは聞いていたけど、ここまでとは…

SF映画とかゲームみたいな世界になって来たなとつくづく見入ってしまった。


アイコ「ご注文を承ります。タッチパネルからご選択か直接ご注文ください♪」

久里恵「え~っと、じゃあとりあえず~おにぎり!」

アイコ「こちらからお選びください。」

  いろんなおにぎりが画面に表示された。

  新商品とかいろいろ攻めてるのもあるけど、私はもう決まっている。

久里恵「ん~っと、じゃあ明太子がいいな!一つね!」

  画面右端のカートと書かれているリストに追加された。

久里恵「あっとっわぁ~梅酒!梅酒ある?」

アイコ「こちらからお選びください。」

  数種類の梅酒が画面に表示された。

久里恵「これこれぇ♪(ピッ)」

  私はお気に入りのいつもの紫蘇梅酒を選択した。

  カートのリストに追加された。

久里恵「そうだ!ダンナのご飯も買っていってあげなきゃ!」

アイコ「こちらからお選びください。」

  お弁当、おにぎり、パックライス、お米などが表示された。

久里恵「違う違うそうじゃ、そうじゃない!・・・ごめんねぇ ダンナってのは猫の事なんだ(苦笑)」

アイコ「そうでしたか!大変失礼致しました。キャットフードはこちらになります。こちらからお選びください。」

  いろんなキャットフードが表示された。かわいい猫のイラストも表示されている。こういう気配りは好きだ大好きだv

久里恵「ダンナにはコレ♪ 以上でいいかな!」

AIアバター「かしこまりました。少々お待ちください。」

  するとAIアバターがアイドルばりに歌い踊りだした。

  

  ♬おっまったっせ しぃます~(まだっまだまだ) もうすぐだぁよ まててね?(おまたせ~!イェーイ!!)♬

  何だこれ。何だこれー!!好きだ大好きだv

  

  魅入ってしばらくするとディスプレイ下の台がウィィィンと開いた。

  ベルトコンベアに乗った商品がレジ袋に入れられ出てきた。

  

アイコ「ご注文の品にお間違いはありませんか?ご確認ください。」

久里恵「うん、大丈夫!」

アイコ「お会計550円になります。お支払いはスマホ決済アプリより自動決済となります。お買い上げありがとうございます♪」


  「ちゃりり~ん♪」

  程なくしてスマホから決済アプリの音が鳴る。


時計を見るとAM2:30を指していた。

人間の店員さんともこんなに話したことなかったのに不覚にもこんなに話し込んでしまうとは!!アイコちゃん恐るべし!!!


アイコ「またのお越しをお待ちしています。(ぺこり)」


ウィィィィン(自動ドアが開く)

私はアイコちゃんにバイバイと手を振り会釈をして店を出た。


カチ…ガチャガチャ…ガチャン!

私は家のドアを開けるとつっかけを雑にペッペッと脱ぎ捨てた。


久里恵「ただいま~!」

すぐにダンナがのしのしと寄って来てスネの当たりにスリスリして来た。

ご飯チョ~ダイ♬と言っているのだ。


久里恵「はいはい、直ぐお食事用意するからね~」

器用に床に散らばった物たちをヒョイヒョイと跨ぎキッチンに向かい

床に置いてあったダンナ用の食器を拾い上げ洗う。


久里恵「ふんふんふ~♪ ふっふっふ~♪ ん♪」

食器に買ってきたダンナ用の猫缶を開けササっと盛り付ける。


と、その刹那ダンナが勢いよく足元から背中を伝い勢いよくよじ登って来た!!

久里恵「イタイイタイ!!!爪立てんな!も~!!」

そう、ダンナはいつもこうなのである。


久里恵「はいはいはい!!でも食べるのはあっちな!…よいしょっと!」

片手に食器、片手にダンナを抱えこたつテーブルの方へと運ぶ。

季節は春で暖かくこたつ布団は無い。


ダンナと食器を床に置き、ガサガサとレジ袋からおにぎりと梅酒を取りだすとテーブルに置いた。


久里恵「よっし!じゃあ今日も神たちのお恵みをいただきましょう!!」

プシュっ!!梅酒缶のプルタブを開け、グビグビっと飲む私。

久里恵「ぷっはああああああああああ!!!んめえええええっしゅ!!!」

ダンナもハムハムとかわいいお口で上品に食べている。

久里恵「からのぉ…(ぺりぺり)はむっ!!もぐもぐ…」

おにぎりの包装を取ると一気にほおばる。

久里恵「ん~~~~~~~~!!!!v」

紫蘇梅酒と明太子の味が絶妙に絡まり口の中いっぱいに広がる。

うまし!!


そしてスマホを片手に今日の配信を振り返る。

一通り見終わると眠気が来てそのままパタッと横になり寝落ちるのであった。


これが私の一日だ。


つづく


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